2013 Fiscal Year Annual Research Report
子ども、一般成人及び競技者の体分節パラメーター推定法の確立とスポーツ科学への応用
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24300218
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
船渡 和男 日本体育大学, 体育学部, 教授 (60181442)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 三次元人体形状 / 形態 / 体分節パラメーター / 体分節重心 / 慣性モーメント / MRI / 身体密度 / 身体重心 |
Research Abstract |
人体計測やスポーツバイオメカニクス研究において、体分節パラメーター(体分節の質量、重心位置および慣性モーメントなど、以下BSP)は重要な指標であるにかかわらず、それらは屍体やモデリング法などから得られた値が用いられてきた。その背景には体分節体積や密度を推定することが煩雑で手間のかかることが挙げられる。本研究の目的は、三次元人体形状装置を用いて体分節体積を算出し、かつMRI法により筋、骨、脂肪組織などの分布を定量化して体分節密度を推定することにより、体分節パラメーターを推定することである。本年度は人体のBSPの測定法の開発と正確性、再現性と妥当性の検討を中心に研究を遂行した。三次元人体形状装置によって全身をスキャンし、再構築された立体データを解剖学的モデルに基準として各体分節に切断する。各体分節に関して体積や体積中心などの数値を算出した。一方同一被験者についてMRI法で全身をスキャンし、同一体分節毎に分割した後、MRI横断面画像から筋、骨および皮下脂肪組織を同定し各組織面積を計測した。このデータを体分節体積画像に挿入して当該体分節の質量分布、質量、質量中心及び慣性モーメントなどを算出し、質量分布、重心位置および慣性モーメントデータを求めることが可能になった。一方MRIデータから体分節密度の推定方法では、下腿部について、MRIから求めた密度分布と屍体からの先行研究との比較をおこなった結果、下腿での密度分布は1.04g/cm3から1.13 g/cm3の範囲にばらついていることが示された。MRI法で求めた下腿全体の密度は1.071 g/cm3(左)1.075 g/cm3(右)右 となり、Clauserの屍体から求められた先行研究の値(1.084 g/cm3)より、約0.01 g/cm3少なくなる値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を実施するために使用する研究施設・設備・研究環境の整備として、三次元人体形状計測装置(BLS)は、体分節形状計測に関しては新たなソフトウエアを導入することによってかなり高い精度での人体形状計測が可能となった。つまり従来の一般的な身長や周径囲などの基本的身体計測項目に加えて、体表面積や各体節の体積、水平面・矢状面・前頭面に対する横断(あるいは投射)面積などが容易に計測が可能となった。加えてそのような従来からの人体計測に止まらず、体表面積、体節体積あるいは流体力学的分析に関する諸分野とも密接に関係するデータを取得することができ、今後の利用価値が期待できる。またMRI画像分析とBLSを統合した新規ソフトウエアを開発することによって、体積中心、重心、慣性主軸および慣性モーメント算出が可能となり、スポーツ科学研究に向けての基礎ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、MRIから求めた全身の密度分布を、三次元形状測定装置から得られたか各体分節に挿入することにより、精度を検討の上、質量比、重心位置および慣性パラメーターについて、日本人や個人の特徴について言及する予定である。 体分節の慣性主軸の決定と慣性モーメント算出のためのソフトウエアの開発を行い、BLSから得られた三次元の空間座標内にMRIから求めた組織分布を配置して、体分節質量の再構築を行った後、重心点を求め、先ず重心を通過する慣性主軸三軸を決定し、それぞれの軸周りの慣性モーメントを算出する。そのためには、人体に添付したランドマークから自動的に測定部位が同定でき、その部位での長軸に直交する面での周径囲や横断面積あるいは、解剖学的切断面に沿った体分節の分割とそれぞれの体分節体積の計測などが可能となるようにソフトウエアの開発が必要となる。 三次元人体計測データの健康医・科学およびスポーツ科学への応用面では、三次元データにカラー情報のマッピングを実行して表示するとともに、自動認識された頭頂点などにランドマークを自動配置する。また、被計測者に貼り付けた外付けランドマーク位置を自動検出する。これらのマークを関節中心点として人体計測法に基づく計測部位の正確な位置決めを行い、各四肢の長さや周囲計の計測を自動で行う。その際各周径囲の計測では、各体節長の相対的部位地点を自動認識し、かつその部位での体分節の長軸に直行する面の外周とする。さらに体表面積の算出(基礎代謝や安静時代謝との関連、健康科学)や各身体セグメントの体積、部分重心点や関係モーメントなどの算出(スポーツバイオメカニクスへの応用)、スポーツ特異的な姿勢分析(例えば競泳のストリームライン姿勢での揚力、抗力推定などの流体力学的応用)などに研究を発展させていくことを念頭においている。
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