2013 Fiscal Year Annual Research Report
晩婚化に伴う個体発生初期要因変化が児の発達に及ぼす影響の検証:健康教育の視点から
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24300228
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 司 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50235256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡井 崇 昭和大学, 医学部, 教授 (40126016)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生殖医療 / 行動・情緒発達 (CBCL) / 対人反応(SRS) / 凍結胚 / 顕微授精 / 出生体重 / 保健教育 / 生涯教育 |
Research Abstract |
近年、生殖補助医療によって生まれた子どもは急速に増加し、現在では新生児の40人に1人に達している。しかしその子どもに対する影響の検討は不十分であり、特に発達におよぼす中長期的影響はほとんど不明のままである。また、ほとんどの国民は、生殖医療を受ける人々を含めて、そのような重要な課題が未知のままであることを知らないままであり、疑念すら抱いたことのない人も少なくないと推測される。本研究は、1)生殖医療およびその様々な条件(胚凍結の有無、顕微授精の有無等)が、子どもの発達、特に行動面(精神発達面)の発達にどのような影響をおよぼすか、2)生殖医療を受ける場合に、最も子どもの成長・発達に有利な条件は何か、また、3)それに関する知見をどのようにして国民に伝えるべきか(健康教育をどのように行っていくべきか?)について明らかにしていくことを目的に実施してきた。1)については、自然分娩の対照児と生殖医療(ART)による出生児(ART児)の比較から、出生体重はART児の方が自然分娩の対照児よりも重く、4-5歳時点におけるChild Behavior Checklist (CBCL)を用いた行動や情緒の問題についての評価では、internal, externalのいずれの問題についても両群に有意差がなく、Social Responsiveness Scale (SRS)による対人反応の評価ではむしろART児の方が対照児より良好であった。これらについて今後諸々の交絡要因を統制した解析を進める。2)については、凍結胚を用いた方が出生体重は重いことが示された。3)に関しては、1-2)の結果報告も含めて、一般向けのシンポジウムを開催したが、人により立場により生殖医療へ見方は勿論、研究者側が望ましいと考える早めの結婚・出産を可能とする社会の実現を進めることについても意見は様々で、さらに調査を行い慎重に方法を工夫していく必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生殖医療の発達への影響についての疫学調査については、ほぼ予定通りデータ収集が進んでいる。ただし交絡要因を統制した解析は、層別の解析はおこなっているが、多変量での解析は未完了であり、若干遅れている。H26年度にそれを確実に行い、論文化を進めたい。生殖医療の影響を国民にどう伝えるか、教育にどう活かすかについては、昨年11月に公開シンポジウムを行い、疫学調査時の自由記述と合わせて、様々な意見を得ている。これもほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は身体面の成長を中心に研究協力者(児)のフォローアップを進める。それとともに、現在収集済みのデータについての解析を行い、学会発表、論文化を含む公表を進める。生殖医療の影響を国民にどう伝えるか、教育にどう活かすかについては、調査時の自由記述ならびにシンポジウム参加者の意見から、立場によって様々な考えがあり、それをどう考慮して進めていくかが大きな問題であること、またこれから出産を考える年齢にある人あるいは若い人たちが、妊娠に適した年齢、あるいは不妊の増加を含めて年齢が進むことによる妊娠・出産と生まれてくる子供への影響についてどの程度知識を有しているのかを検討する必要があると考えられた。このため、20代の人たちを中心に他の年代の人達を含めて、この問題についてのリテラシーをどの程度有しているのかについて詳細な調査を行う。この調査と、疫学調査並びにH25年のシンポジウムで得られた意見(記述)を基に、生まれてくる子供の発達・生殖医療の諸条件の影響を含めた生殖医療利用のあり方、あるいはわが国の若い人達が今後妊娠・出産についてどのように考えるべきかについての啓発教育の方法、また学校保健教育でそれをどのように活かすべきかについての試案作成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フォローアップのための人材の雇用が進まなかったため。 新たな雇用を計画している。
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