2013 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋の脂質利用亢進作用を有する食品因子の探索と生活習慣病予防への応用
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24300254
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
飯田 薫子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (50375458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 和雄 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30153711)
鈴木 恵美子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80154524)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨格筋細胞 / 脂質代謝 / 肥満 / 食品因子 / 大豆イソフラボン |
Research Abstract |
本年度は脂質代謝の中心的役割を果たす骨格筋のミトコンドリアに着目し、ミトコンドリア増生を促す食品因子を探索することを試みた。昨年度の検討で大豆イソフラボンであるDaidzeinが、ミトコンドリア関連遺伝子の発現を制御する転写因子であるTfamの転写活性を増強する可能性を見いだしたため、今年度はDaizeinが生体に与える作用を中心に検討を行った。 C2C12筋細胞にDaidzeinを負荷し、ミトコンドリア関連遺伝子の発現について検討した。その結果、cytochrome bやATP synthaseなどミトコンドリア電子伝達系に関わる遺伝子の発現が増加することを明らかとした。またプロモーターアッセイによる解析により、DaidzeinによるTfamの転写活性の増強には、転写因子NRF-1およびNRF-2が関わっている可能性を示唆した。(未発表データ。投稿準備中)。またC57BL6マウスに高脂肪高ショ糖食とともにDaidzeinを投与したところ、Daidzein負荷群では体重増加が有意に抑制されることを明らかとした。これらのマウスにおいて、脂肪組織におけるPPARγの発現が誘導され脂肪細胞が小型化し、脂肪組織における炎症性サイトカイン(MCP-1、TNF-α)の発現が減少すること、さらにDaidzeinが脂肪組織のPPARγを介してインスリン抵抗性を改善する可能性を示した (Sakamoto et al.: Mol Nutr Food Res., 2013) 一方近年、低糖質食が肥満者の減量や血糖低下に効果的であることが報告さているが、低糖質食が各代謝臓器に与える影響は未知な部分が多い。そこで本研究では低糖質食負荷をマウスに行い、肝臓・心筋・骨格筋における代謝関連遺伝子の発現変化、及び個体の耐糖能・生化学パラメータについて検討を行った。その結果、低糖質食摂取下では、血糖値の低下やインスリン感受性の亢進を認めること、また、各臓器において糖・脂質代謝関連遺伝子が異なる変動を示し、代謝臓器による適応変化が異なることを明らかとした。(未発表データ)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも述べたように、前年度に引き続き、骨格筋での脂質代謝亢進作用を有する食品因子の候補をリストアップすることができ、その候補因子の1つであるdaidzeinについては、骨格筋でのミトコンドリア活性を増加することや、その分子生物学的なメカニズムの一旦を明らかにすることができた。さらに、肥満モデル動物に対するdaidzein投与の新たな作用と臨床応用への可能性を明らかとすることができた。上記のような研究成果を得ており、さらに「研究成果の国際誌への発表」などの目標についても達成できていることから、計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を以下に示す。 1) これまでの検討でリストアップした、daidzeinを含めた候補食品因子について、実際に骨格筋の脂質代謝に影響をもたらすかどうかを解析する。C2C12筋細胞や肥満モデル動物にこれらの食品因子を添加し、骨格筋において・脂肪酸の取り込みに関与する輸送体や酵素、・脂肪酸の分解利用に関与するβ酸化系/TCA回路/ミトコンドリア電子伝達系の各主要酵素、・エネルギー代謝に影響するホルモンとその受容体、などの代謝関連遺伝子の遺伝子発現量を評価する。 2) これらの食品因子が骨格筋の脂質代謝やミトコンドリア関連遺伝子の発現を増強させる可能性を見出した場合、変動が認められた遺伝子をターゲットとしたプロモーターアッセイを行う。発光ルシフェラーゼを組み込んだ転写活性測定用ベクターを用い、ターゲットとする遺伝子のプロモーター制御領域を上流に挿入したアッセイ用ベクターを構築する。ベクターはC2C12細胞に導入し、食品因子による直接的な転写活性を評価する。これにより、候補食品因子がターゲット遺伝子の発現を制御するメカニズムを、より詳細に検討していく。 3) 候補食品因子について、人における摂取状況と生活習慣病関連パラメータ(肥満度、血糖、血中脂質など)についての関連性を明らかにするための疫学調査に着手する。その準備として、これら食品因子の摂取状況を調査するための適切な調査法などを検討するとともに、既存の報告を参照にして調査の対象者や解析項目などについて絞り込みを行い、具体的な調査計画案を立案する。 4)本年度に検討した低糖質食にとどまらず、脂質と糖質の比率を様々に変えた食事をマウスに投与し、肝臓・心筋・骨格筋における代謝関連遺伝子の発現変化や個体の耐糖能・生化学パラメータについて検討を行い、肥満制御における食事の脂質と糖質の適正比率を検討することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究費の一部が次年度繰越金となった。 この理由として、平成25年度は、初回申請時に予想した平成25年度の見込必要経費とほぼ同額の経費を研究に使用したが、平成24年度から繰り越した未使用額が、平成25年度にほぼ同額の未使用額として残存したためである。 当初の研究計画では動物を用いた研究と細胞を用いた研究を並行して行う予定であったが、細胞実験において様々な所見が先行して得られたため、現在は細胞実験を用いた詳細なメカニズム解析を優先している。そこで26年度は当該助成金を使用して動物実験に長けた研究補助者を引き続き雇用し、動物実験に重きを置いて研究を進めていく予定である。さらに動物実験に必要な小動物用の血圧計や酸素消費量の測定器などの購入を予定している。
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[Presentation] 脂質摂取と2型糖尿病リスクとの関連性についてのメタ解析
Author(s)
田島諒子, 児玉暁, 堀川千嘉, 藤原和哉, 吉澤咲子, 平安座依子, 菅原歩美, 谷内洋子, 齋藤あき, 飯田薫子, 曽根博仁
Organizer
第67回 日本栄養・食糧学会大会
Place of Presentation
名古屋大学
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