2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24300305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
宮腰 哲雄 明治大学, 理工学部, 教授 (00062018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (10272527)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 講師 (40409462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 琉球漆器 / 熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析法 / Sr同位体比分析法 / 産地同定 / 漆文化 / Rhus verniciflua / Rhus succedanea / 漆の科学分析 |
Research Abstract |
琉球漆器は箔絵、螺鈿、堆錦などの高い制作技術で作られ、日本や中国にない独自のデザインで琉球の漆文化を発展させてきた。しかし琉球漆器の製造に使われた漆原料がどのような種類の漆を使ったかについては解っていない。我々は熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)法を開発し、歴史的な漆器に使われた漆が日本・中国の漆Rhus vernicifluaであるか、ベトナム・台湾のハゼノキ漆Rhus succedaneaであるか、タイ・ミャンマーのブラックツリー漆Melanorrhoea(Gluta)usitataであるかを識別できることを報告してきた。しかしハゼノキ漆Rhus succedaneaはベトナムや台湾のみならず琉球、中国、九州、四国にも木が存在するため、その産地は識別できない。本研究の目的は歴史的な琉球漆器に使われた漆原料の産地を決定することにある。そのために我々が開発した熱分解-GC/MS法と吉田らが研究中のSr同位体比分析法を組み合わせた分析法で琉球漆器に使われた漆の産地同定を研究している。熱分解一GC/MS分析法はアジアの3種の漆の識別が可能で、漆樹が生育する土壌中の微量なSr同位体(比)が漆液に含有するSr同位体比に影響し、日本産漆と中国産漆ではその同位体比の違いにより識別が可能になった。そこでこの手法をハゼノキの樹液に応用してハゼノキの樹液に含まれるSr同位体比を測定し、その産地との関連を探るデータを収集するものである。また歴史的な琉球漆器のSr同位体比を測定し、それをもとに漆の産地同定を検討する。また漆器の顔料や添加物の分析、漆膜のクロスセクション観察、顕微IRスペクトル及び下地の材料分析から漆器制作の技法を検討する。さらに、これらの研究をもとに琉球の漆工法を研究するとともに琉球王朝時代の漆や漆器の交易・流通の実態を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学分析に必要なサンプルは、連携研究員や琉球漆を所蔵している博物館、美術館および埋蔵文化財センターや教育委員会の協力でいろいろ入手できた。それらのサンプルについて熱分解ガスクロマトグラフィー1質量分析(GC/MS)法とSr同位体比分析を進めており、またクロスセクション観察、顕微IRスペクトル及び下地の材料分析で検討してきた。それらの研究成果は関連する学会で研究発表するともに、浦添市美術館の協力で、2012年11月17日に浦添市てだこホール市民交流室で「琉球の漆文化と科学2012」と題する講演・報告会を開催し、多くの参加者があり、本研究の取り組みについて説明し研究成果を発表し、沖縄の漆に関わる研究者と交流することができ、大変有意義であった。その後歴史的なサンプルの提供や、資料提供を受けることができ、引き続き研究交流を続け、研究を推進して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の取り組みを沖縄で行なわれた講演会で研究成果を発表したことで沖縄漆器を所蔵している博物館、埋蔵文化財および教育委員会から資料の提供や情報が寄せられ、歴史的なサンプルが入手容易になり、今後の研究の進展が期待される。また地元の協力を得ながら研究を進めることができるようになり、今後も沖縄と協力しながら研究を進めたいと考えている。 また東南アジアの歴史的な漆器片を大学や博物館の研究員から入手することができ、比較検討のためにこれらのサンプルについても科学分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きハゼノキに関わるサンプルの収集とその分析評価、歴史的な琉球漆器の科学分析を行い、琉球漆器に使われた漆の産地同定を研究する。また沖縄の博物館、埋蔵文化財および教育委員会から歴史的な漆サンプルの提供や情報が寄せられており、その分析結果を地元で講演会を開催するなどして、研究の目的、意義を紹介し、研究成果を報告していきたと考えている。 ハゼノキの漆に関係して東南アジアの漆器の科学分析でも比較検討することで研究を進めたいと考えている。 本分析手法は琉球漆器の科学分析だけに限定されるものでなく、縄文漆器、出土漆器、アイヌ漆器、輸出漆器、在外の歴史的な漆器の分析にも応用できる手法であると考えているので、関連する学会や研究論文誌に研究報告して、この応用についても発展させたいと考えている。
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Research Products
(10 results)