2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24300305
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
宮腰 哲雄 明治大学, 理工学部, 教授 (00062018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦夫 東京大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (10272527)
本多 貴之 明治大学, 理工学部, 講師 (40409462)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 琉球漆器 / 熱分解ーGC/MS分析 / Sr同位体比分析 / 漆の産地同定 / アンナン漆 / ウルシオール / クロスセクション / 漆の材料分析 |
Research Abstract |
琉球漆器は箔絵、螺鈿、堆錦などの高い制作技術で作られ、日本や中国にない独自のデザインで琉球の漆文化を発展させてきた。しかし琉球漆器の製造に使われた漆原料がどのような種類の漆を使ったかについては解っていない。我々が開発した熱分解―GC/MS法と吉田らが研究中のSr同位体比分析法を組み合わせた分析法で琉球漆器に使われた漆の産地同定を研究している。熱分解-GC/MS分析法はアジアの3種の漆の識別が可能で、漆樹が生育する土壌中の微量なSr同位体(比)が漆液に含有するSr同位体比に影響し、日本産漆と中国産漆ではその同位体比の違いにより識別が可能になった。この手法とSr同位体比を用いて歴史的な琉球漆器で分析し、それをもとに漆の産地同定を検討する。また漆器の顔料や添加物の分析、漆膜のクロスセクション観察、顕微IRスペクトル及び下地の材料分析から漆器制作の技法を検討する。さらに、これらの研究をもとに琉球の漆工法を研究するとともに琉球王朝時代の漆や漆器の交易・流通の実態を明らかにする研究に取り組んだ。 以上に関わる研究は、歴史的な漆工芸品のシステム化した科学分析に取り組み、それに関わる漆文化の講演会を開催し、研究で得られた成果は学会で研究発表し、研究試料を提供していただいた関係機関に報告し、学問的に重要な研究成果について研究発表した。その主な成果は、久米島の君南風の衣装櫃「黒漆牡丹唐草沈金小櫃」の剥落片の分析結果は「久米島博物館所蔵の黒漆牡丹唐草沈金小櫃の科学分析と文化」として久米島博物館紀要13号(2013)」に報告した。また熱分解-GC/MS法を応用して縄文時代の出土漆器を分析し評価した。更に、熱分解―GC/MS法とSr(ストロンチウム)同位体比分析法を組み合わせた分析法で歴史的な琉球漆器に用いられた漆の産地同定についても研究し、その成果を学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歴史的な琉球漆器を科学分析し、それに使われた漆原料、漆材料を評価する研究はこれまでなかった。そこで本研究では伝世品や出土の漆工芸品から得られる小片・剥落片を用いて熱分解ーGC/MS分析、Sr同位体比分析、クロスセクションおよび蛍光X線分析法などで分析し、漆として日本、中国産漆だけでなく、ベトナムのアンナン漆、その他タイやミャンマーのGluta usitata漆が使われていることが見いだした。またそれら漆の利用についても4つの使用法があることを解明した。以上のようにこれまで知られていない新しい事実を見いだし、その利用法についてもデータを収集するなど研究成果が得られ、それらの研究成果はアジアの漆利用や日本の歴史的に漆の利用法と比較検討することができるなど成果を積み上げることができ、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、これまで歴史的な漆工芸品を科学分析するために熱分解―GC(ガスクロマトグラフィー)/MS(質量分析)法を開発し、多くの研究成果を発表してきた。本研究は、この熱分解―GC/MS分析だけでなく、総合的な科学分析法で歴史的な漆工芸品に使われた漆材料や漆芸を解明を目指していて、そのためには更に多くの歴史的な漆工芸品の科学分析の実例を積み上げる必要を感じた。また琉球漆器の科学分析だけでなく、アジアの漆器や日本の歴史的な漆工芸品の科学分析例も必要だと考えてる。そこで歴史的な琉球漆器(伝世品)だけでなく出土漆についても分析し、漆器制作に使われた漆原料、漆材料を評価する。それらの科学分析のデータを基に漆の材料の成分組成だけでなく、文化的側面からも検討を加え、漆の流通経路、漆の伝統や文化を究明したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が特に問題なく進行したため研究経費を有効に使うことができ、またアルバイト等の人件費も計画以上に必要なかったので、研究費の支出を抑えることができた。 今年度は研究の最終年度のため研究範囲を広げ、研究目標を達成するよう消耗品、旅費およびデータ収集と、その生理のアルバイト代に当て、研究費を有効に使用したい。
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Research Products
(14 results)