2013 Fiscal Year Annual Research Report
南海トラフにおける未知の巨大津波に関する地形・地質学的研究
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24300319
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
前杢 英明 法政大学, 文学部, 教授 (50222287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍倉 正展 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層地震研究センター, チーム長 (00357188)
行谷 佑一 独立行政法人産業技術総合研究所, 活断層地震研究センター, 研究員 (90466235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 橋杭岩 / 南海トラフ / 津波 / 完新世 / 宇宙線照射年代 / 連動型地震 |
Research Abstract |
本研究は,紀伊半島南端部に近い和歌山県串本町橋杭岩の波食棚上に分布する巨礫の地形・地質学的研究から,歴史時代に経験した津波をはるかに上回る規模の津波によって巨礫が運搬された可能性を指摘した我々のこれまでの研究をもとに,完新世後半に南海トラフで発生したと推定される未知の巨大津波に関して,関連する地形や地質学的情報から,その発生時期,津波浸水域,波源モデルなどについて具体的に明らかにすることを目的とするものである。さらに,低角沈み込み帯における,海溝に並行して発達するプレート内分岐断層とメガスラストとの連動などを考慮した新たな連動型地震発生モデルの再構築を試みることによって,将来の巨大津波の発生可能性について検討することを目指している。 平成25年度に実施した研究は、24年度に串本古座高校において実施した津波堆積物のボーリング調査で得られた試料について、詳細な年代測定や有機物試料の環境分析などを行い、コアの対比を行った。それによって、津波発生層準を最大14層各コアで確認し、また堆積層の水平方向の変化も観察できた。また上部の1~1.5mは弥生後期の遺物が出土する層準の上位にあたるが、そこでは津波堆積物は確認されなかった。またイベントは400年~600年の間隔で非常に周期的に堆積しており、500年程度の周期で非常に規模の大きな津波が、この地域に襲来したことが判明した。 橋杭岩に分布する巨礫の側面に付着するヤッコカンザシなどの生物遺骸の年代は12~14世紀と17~18世紀を示すことから、最後に礫が動いた大津波は宝永津波であることがわかり、礫を動かす大津波も500年程度の間隔で襲来しており、コアの解析と矛盾しない結果が得られた。今後は周辺地域に分布する化石付着生物の離水時期と津波発生時期との対比や段丘地形形成過程など、津波と地殻変動の関係について総合的に分析して行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に計画していた研究計画は概ね実施できた。しかし、国立公園内での試料採取許可取得に予想外の時間がかかったため、宇宙線照射年代の試料採取のみ次年度に行うことにした。そのかわりに、調査範囲を少し広げたところ、新たに重要な化石試料が付着する路頭を発見した。これも次年度精査することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は新たな化石路頭(古座九龍島)の現地調査と試料採取、年代測定を行い、隆起イベントのより詳細な情報を収集する。また宇宙線照射年代用の試料採取許可の早期取得と年代試料の採取、年代測定を行い、津波発生時期をより限定的にする。津波礫の分布による津波波源モデリングや、化石試料の分布高度と年代による隆起イベントの特定、ボーリングコアによる完新世における津波イベントの発生履歴については、解析がほぼ終わっているので、今後は研究成果をとりまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
宇宙線照射年代に関する調査許可取得などの段取りが遅れたため、調査が実施できなかった。このため、その分に関する旅費や経費がかからなかったため次年度使用額が生じた。 2014年度は宇宙線照射年代に関する試料採取や実験にかかわる消耗品費が生じるため、その費用として支出する予定である。
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