2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24300328
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三木 義男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 啓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50321790)
竹中 克也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (20378706)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 乳がん / BRCA1/2遺伝子 / 合成致死 / 化合物ライブラリー |
Research Abstract |
近年、BRCA1/2遺伝子変異腫瘍に対して、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)の阻害剤は、高い殺傷作用を発揮することが報告された。これは、BRCA遺伝子変異に対してPARP1酵素を阻害することで、破綻したDNA相同組換え修復機構とそのバックアップのために働く酵素(PARP1)が失活するために生じると考えられている。この時、失活したBRCA遺伝子産物に対してPARP1阻害剤は、「合成致死性」の関係にあり、両方の機能が共に阻害されたとき、がん細胞は消滅する。BRCA1/2タンパク質は、DNA修復以外に中心体や細胞質分裂にも関与する多機能タンパク質であることから、DNA修復阻害剤以外の組み合わせによって合成致死性効果は期待される。従来の分子標的の抗がん薬は、標的とするタンパク質の立体構造が似ているものに作用して副作用を起こすことが知られている。我々は、BRCA2がDNA修復に加えて中心体の複製やポジショニング、細胞質分裂に機能することを報告してきた。そこで、BRCA2の中心体、および細胞質分裂に対する機能に注目して、PARP1阻害剤とは異なる機構で合成致死効果を示す低分子化合物を見出すため、東京医科歯科大学医療機能分子開発室所有の化合物ライブラリーを用いて、そのスクリーニングを行った。これまでにBRCA2欠失細胞(Capan-1細胞)に対して低分子既知化合物1230個の増殖抑制効果を測定した結果、40化合物(3.2%)がヒットした。そのうち抗菌・抗癌薬が70%、微小化形成阻害作用を示す化合物が13%含まれていた。本研究はスタートしたばかりであるが、この既知化合物のスクリーニング結果から、今後機能未知化合物のスクリーニングから検出されるヒット化合物は、抗菌・抗癌作用を有する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまでに、膜型マトリックスメタロプロテアーゼ1 (MT1-MMP)によって、BRCA2タンパク質が切断(2135番目のアスパラギンと2136番目のロイシンの間)されることを明らかにし、各切断部位を特異的に認識する抗体を作成した。さらに、切断型BRCA2は、N末端側をN-BRCA2、C末端側をC-BRCA2と命名し、このBRCA2タンパク質切断の生理的意義を明らかにした。またBRCA2は、細胞周期のG1/S期からM期前期にかけて中心体の周りを取り巻く様に局在し、M期後期に中心体から消失する。細胞質分裂期に入ると、母・娘細胞間に形成されるミッドボディに局在し細胞質分裂に関与することが報告されている。我々は、BRCA2がミッドボディにおいてヒト非筋肉型ミオシンIICと共局在し、ミオシンIICのATPase活性に対するBRCA2の機能を明らかにした。このように、「ゲノムの安定性維持」ネットワークの解明を進めたと同時に、明らかにしたBRCA に関るネットワーク機能を中心とした分子の合成致死性解析、及び化合物ライブラリーを用い合成致死性を示す化合物のスクリーニングを進め、候補を同定した。これにより、本研究は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.BRCAを中心とする「ゲノムの安定性維持」ネットワークとしてさらなる機能を解明する。 2.さらに同定された分子について、合成致死スクリーニングを行い、新規分子標的、あるいは併用療法改善のための標的分子の同定を目指す。 3.これまでに得られた候補分子及び化合物ライブラリーのスクリーニングから得られた候補化合物を合成致死療法へ応用するための検証実験を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
BRCAを中心とした機能ネットワークの解析が予想以上に円滑に進み、BRCAネットワーク関連分子の同定にかかる費用が予定より少額となったため。 次年度には、BRCAネットワーク関連分子の合成致死性解析、及び化合物ライブラリーのスクリーニングを行ったが、計画よりスクリーニング範囲を広げこれに使用した。
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Research Products
(9 results)