2013 Fiscal Year Annual Research Report
食道扁平上皮癌の新たな治療体系の構築を目指した統合的ゲノム・エピゲノム解析
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24300341
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
河野 辰幸 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00186115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
江石 義信 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70151959)
小村 健 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10334434)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 食道扁平上皮癌 / ゲノム解析 / エピゲノム解析 / 全エクソンシーケンス / メチル化 / Field cancerization / heterogeneity |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌(ESCC)手術検体の採取に関して、現在までに癌部・非癌部のペア検体を累計約130症例収集済みである。検体は本学バイオリソースセンターにおいて管理しており、DNA・RNAの品質チェックを行ってきた。また最近では手術検体と共に、同一患者の血清に関しても採取を始めている。さらに、食道内多発進行癌症例や、進行癌と表在癌の合併症例、胃癌との重複癌症例の検体も採取している他、最近の症例では同一腫瘍内で可及的に複数箇所から検体を採取するよう努力している。これらの検体の解析は、腫瘍内のheterogeneityの解明に役立つ他、ESCCの発生において重要な概念であるfield cancerizationの解明にもつながる可能性があると考えている。その他、JCOG9907の結果を受けて術前化学療法が推奨される流れの中、当院での手術症例も術前化学療法症例が増加傾向にある。これらの中で、術前化学療法後にも腫瘍volumeが相当量残る症例に関し、数例検体を採取した。これらの解析を通じて、化学療法耐性に関わるゲノム・エピゲノム異常に関しても今後検討していく予定である。 解析は主に、ゲノム解析とエピゲノム解析を軸に行っている。ゲノム解析としては予後が判明している症例において約20症例において全エクソンシーケンスを施行中であり、今後解析を行っていく予定である。網羅的エピゲノム解析としては、約70症例において、Illumina社のBeadArrayを用いた網羅的メチル化解析を行った。解析アルゴリズムを確立し、特にリンパ節転移(UICC TNM分類第7版におけるN0 vs N3)と有意な相関を示すDNAメチル化異常に関し、複数の候補を抽出してきた。これらのメチル化異常に関しては既にパイロシーケンスで検証済みであり、現在validation cohortにおける検証を行っている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体の採取に関して、安定して年間30例程度の手術検体を継続採取している。また、多発進行癌症例等を含め、field cancerizationの解明を目指した検体の採取も継続して行っている。過去に採取したサンプルに関しては概ねDNA・RNAのクオリティチェックを終了しており、以後の解析へと進めている。 ゲノム解析に関して、現在約20症例において全エクソンシーケンスを施行している。シーケンスは概ね終了しており、現在解析へと移行しつつある段階である。今後は予後等臨床情報との相関を含めて詳細な検討を行い、ESCCにおいて鍵となるゲノム異常を抽出し、引き続きin vitro, in vivoの実験系で検証を行っていく予定である。エクソンシーケンスの実施・解析にやや時間を要しているが、概ね順調に進行している。 エピゲノム解析に関しては、Illumina社メチル化アレイを用いた網羅的メチル化解析を約70症例で終了しており、解析アルゴリズムを確立してきた。このアルゴリズムを基に、特にESCC症例においてリンパ節転移(UICC TNM分類第7版におけるN0 vs N3)との相関を示すDNAメチル化異常の候補を複数抽出してきた。現在validation cohortによる解析を施行中であり、順調に進行している。 網羅的発現解析に関しては、RNAのクオリティ等の観点から、使用症例を選択する必要があったため、上記ゲノム・エピゲノム解析の結果を見ながら施行する方針としたため、まだ未着手である。ただ、上記解析に目処がついてきたため、網羅的発現解析に関しても今後順次施行していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ゲノム解析に関しては全エクソンシーケンスの解析を行う段階にあり、この結果を基に、ESCCにおいて鍵となり得るゲノム異常の抽出を行っていく。また、網羅的メチル化解析に関しても、リンパ節転移との相関についてvalidation cohortでの検証を行っていくと共に、今後予定しているAgilent社発現アレイによる網羅的遺伝子発現解析と組み合わせることで、ESCCにおいてDNAメチル化によってサイレンシングを受けている遺伝子の抽出を行っていく予定である。これらの解析結果に基づき、重要なゲノム・エピゲノム異常に関してはin vitro, in vivoの実験系で機能解析を進めていく。 また、本研究の重要な目的の一つであるfield cancerizationのメカニズム解明を目指した解析についても検討している。具体的には、多発進行癌症例や、進行癌と表在癌の重複例などでの全エクソンシーケンスをはじめとした解析を行っていく。さらに同一腫瘍内での複数箇所から採取したサンプルにおいても同様の解析を行うことで、ESCC腫瘍内におけるheterogeneityに関しても検討していく。化学療法後症例に関しては症例数が少ないが、現在有効な抗癌剤が限られているESCCにおいて化学療法耐性メカニズムの解明は重要であるため、可能な限り解析を行っていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、改めてDNA・RNAのクオリティチェックを行った結果、特にRNAに関しては網羅的遺伝子発現解析に耐えうる検体が限られていたため、発現アレイに関して未施行である。このためAgilent社発現アレイを必要症例分購入する費用が次年度持ち越しとなっている。また、全エクソンシーケンスに関して、当初はもう少し症例数を増やして解析する予定であったが、食道内多発進行癌症例等のfield cancerization解明を目指した解析に一部シフトする方針となったため、この分の費用が次年度へ持ち越しとなっている。その他、まだ統合的解析の段階でないため、詳細なin vitro, in vivo解析に移行する際に必要な費用がまだ使用されていない。 今後は、RNAのクオリティが保たれているサンプルにおいて、Agilent社の発現アレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を順次施行していく。食道内多発進行癌症例や同一腫瘍内複数箇所からサンプルを採取した症例においては、全エクソンシーケンスやメチル化解析・遺伝子発現解析等を行っていく予定である。また、現在施行中の全エクソンシーケンスや網羅的メチル化解析の結果を統合的に解析し、重要なゲノム・エピゲノム異常に関してin vitro, in vivo解析で機能検証を行っていく。これらの解析に必要な備品を、次年度分と併せて購入し、使用していく予定である。
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Research Products
(5 results)