2013 Fiscal Year Annual Research Report
がん特異的タンパク質dynAP:新規がん治療標的としての検証
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24300343
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
水上 民夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (80367896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 玲 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60144565)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子標的治療 |
Research Abstract |
申請者らが確立した“ヒト化酵母”技術を駆使して新たに発見したがん特異的発現タンパク質dynAPは、がんの生存・増殖に関わるAkt経路を正に制御し、がんの浸潤・転移に関わるE-cadherin経路を負に制御する。本研究課題の目的は、dynAPの新規がん治療標的分子としての妥当性を証明することにある。 マウス正常細胞株NIH3T3にdynAPを発現させヌードマウスに皮下注射したところ、明確な腫瘍が形成されることを確認した。形成された腫瘍組織は、血管に富み、また細胞間接着が弱い組織像を示した。細胞間接着の低い腫瘍組織の形成は、dynAPによるE-cadherinの低下で説明可能である。 NIH3T3dynAPがこのような特徴ある腫瘍を形成する分子機構を調べた。dynAPはAktSer473のリン酸化を促進する。AktSer473のリン酸化酵素はmTORC2である考えられている。dynAPはmTORC2のサブユニットであるrictorの発現を亢進することを発見した。 rictorのノックダウンにより、NIH3T3dynAPのin vitro腫瘍活性は抑制され、最終的にはdynAP-mTORC2-AktSer473-FoxO3a経路が作動し、細胞の生存が促進されることを見出した。本経路によりdynAPの腫瘍活性の全てを説明できるわけではないが、大いに貢献していると思われる。 またdynAP発現細胞で血管形成の必須因子であるアンジオポエチン1 (Angpt1) mRNAの発現が顕著に亢進していることを見出した。Angpt1はdynAPの血管新生作用の原因分子になっていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
dynAPを発現させたマウスNIH3T3細胞のヌードマウスへの移植モデルで、dynAPの造腫瘍能を確認するとともに、血管新生作用を見出した。さらにdynAPのこれらの特徴あるがん化作用の分子機構として、dynAP-mTORC2-AktSer473-FoxO3a経路の活性化、またdynAPによる血管形成因子Angpt1の発現誘導機構の存在を明らかにすることができた。これらの知見は、dynAPの新規がん治療標的分子としての妥当性、重要性を示すものと言え、大きな成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
dynAPの造腫瘍性と血管新生作用のメカニズムを解明することを目的として、dynAP発現細胞とコントロール細胞に対してDNAマイクロアレイ解析を行い、発現変動遺伝子の探索・同定を進める。これまでの解析により、dynAP発現細胞で血管形成の必須因子であるAngpt1 mRNAの発現が顕著に亢進していることを見出した。RT-PCR法による再現性実験でもAngpt1 mRNAの発現亢進を確認でき、Angpt1はdynAPの血管新生作用の原因分子になっていることが強く示唆された。Angpt1の他にも、がんの増殖、浸潤・転移への関与が知られている数多くの遺伝子の発現変動が観察された。今後は、マイクロアレイ解析によって同定されたdynAP発現細胞で発現変動があった因子について、shRNAノックダウンあるいは過剰発現によって細胞のがん化形質への影響を調べ、dynAPによるがん化の原因となる因子の同定をさらに進める予定である。 dynAPは検討したヒトがん由来細胞株の約半数で発現する一方、正常細胞株においては発現が見られない。臨床サンプルの解析で、各種のがん組織及び正常組織でのdynAPの発現量、発現特異性を知ることにより、dynAPのがん分子標的としての重要性の見極めとともに、dynAP阻害剤の治療対象とするがん種の選定など、臨床開発戦略策定の中核的知見の取得が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
dynAP研究に必要な消耗品の購入に使用する。具体的には、分子細胞生物学用実験試薬(抗体、キット類、化合物購入費他)、細胞培養実験試薬(血清、シャーレ等)の購入の一部に充てる。 dynAPの作用機構の解析研究を推進する。特にdynAPを介するAkt活性化キナーゼの解析を重点的に進める。
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Research Products
(2 results)