2012 Fiscal Year Annual Research Report
動物プランクトン自然死亡の再評価:非捕食死・部分被食死が生態系に与える影響の解明
Project/Area Number |
24310007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 一生 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (00301581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 雄二 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所資源海洋部, 主任研究員 (90392901)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 地球化学 / 環境変動 / 海洋生態 / 生物生産 / プランクトン |
Research Abstract |
1.親潮黒潮移行域に出現する浮遊性被嚢類ウミタル類高密度個体群の分布とその動態を明らかにするため、ヴィジコ.アルプランクトンレコーダー(VPR)によって得られたデータの解析を行った。その結果、(1)ウミタル類高密度個体群は移行域の黒潮系暖水の亜表層(20-30m)の密度躍層に集中して出現する事、(2)その水平距離は最低の見積もりで3km程度である事、(3)個体密度は約1万個体/立方メートルにおよび、その濾水能力は1日以内に高密度パッチ内の水塊を全量濾過すると見積もられる事、さらに(4)個体群の一部はクラゲ類、カイアシ類、浮遊性多毛類等の捕食者に利用される一方で、一日あたり1-3%程度の個体が餌不足等の原因により衰弱し、下層へのフラックスとなっている可能性有る事、が示された。これらの結果は、滋賀県大津、および米国ニューオリンズで開催された先進陸水海洋学会において公表され、現在論文として投稿の準備を進めている。 2.親潮域において動物プランクトンの餌料環境が急速に悪化すると考えられるポストブルーム期の低次生態系動態を明らかにするため、前年に行った集中観測・実験データの解析を進めた。とくに主要カイアシ類6種、オキアミ類1種と微少動物プランクトンの摂餌速度・選択性の解析を進め、各分類群毎の主要餌料と摂餌速度を見積もった。本分析の結果は次年度開催予定の国内外の各学会において公表を行う予定である。 3.動物プランクトン成長、飢餓の指標とする生化学的パラメータの測定のための予備実験を行った。核酸比については、対象とするカイアシ類種・ステージで個体レベルで十分に定量性の得られる手順が確立できた。その他のパラメータ(タンパク質、脂質等)については十分に定量性が確保できない可能性があることから、次年度に向けて酵素等を使用した感度の高い測定法を導入する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた外洋域での船舶調査については観測時間が十分に確保されずデータを蓄積することが出来なかったが、過去データの詳細な解析や十分な予備実験の実施により、次年度以降の船舶観測に対して十分な準備を整える事ができた。一方で次年度以降に予定していた、VPRによるウミタル個体群動態解析では多くの新知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
セジメントトラップによる非捕食死死亡個体の定量方法を確立するため、沿岸域において集中的な観測を行う。これと併せ準備を進めてきた核酸比、タンパク質、酵素等の生理パラメータの測定も行い、各々のデータを相互に検証する事で非捕食死定量法の確立を目指す、また部分被食死については分子学的手法を用いて捕食者の消化管内容物の査定を行う事により、調査対象種を絞り込むことで、採集、実験の効率化を図る。
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Research Products
(3 results)