2013 Fiscal Year Annual Research Report
動物プランクトン自然死亡の再評価:非捕食死・部分被食死が生態系に与える影響の解明
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24310007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 一生 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00301581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 雄二 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所資源海洋部, 主任研究員 (90392901)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 環境変動 / プランクトン / 地球生物化学 |
Research Abstract |
本年は分担研究者に加え、研究協力者である米国ヴァージニア海洋研究所准教授Kam Tangの協力のもと国内において1)非捕食死亡個体の出現状況と環境要因との関係、2)セジメントトラップ試料における死亡個体判別法の開発について調査を行った。このうち1)については分担研究者とともに分析方法を確立し、国内5つの海域において、のべ7回の現場調査・実験を行った。現在、得られた試料について分析を進めている。2)のについては岩手県大槌湾にて2回の観測、実験を行いすでに解析を終了したので以下に報告する。 非捕食死亡した動物プランクトンの多くは沈降粒子として真相へ輸送されると考えられる。しかしながらセジメントトラップ試料に出現する動物プランクトンを鉛直フラックスとするか否かについては、長く議論があった。これは混入した動物プランクトンの生死を判別する方法がないことに起因している。この問題を解決するため大槌湾において生体染色剤を併用したセジメントトラップ採集を行った。観測は5月末,7月上旬の2回にわたり湾内定点(七戻り沖)でセジメントトラップの係留・回収とプランクトンネット採集、採水、環境要因測定を行った。観測の結果、トラップ試料に混入する動物プランクトンのうち、生きてトラップに捕集された個体が死亡個体より1-2桁多いこと、死亡個体による鉛直フラックスは流速と負の関係にあること、その寄与は粒子状沈降フラックスの10%程度であること、が明らかとなった。本研究の結果は投稿論文としてまとめられ、Marine Ecology Progress Series誌に受理済みである。今後は同時に得られた動物プランクトン試料の生化学的分析を進め、死亡個体増減の要因について明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年まで予備実験を重ねてきた、生死個体判別法、ストレス指標となる酵素の定量化など、現場観測の準備が整えた上で、動物プランクトン死亡率が高まる5-7月に国内5カ所においてのべ7回の現地調査を行うことができた。実施した調査、観測のうち一部はすでに投稿論文としてまとめ受理されており、残りの課題に付いても順調に解析がすすんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した観測、実験の試料の解析を進めデータのとりまとめを行うとともに、これを補完するための実験採集を行うことで、環境変動と動物プランクトン死亡個体出現との関係を明らかにしていく。沿岸域のプランクトン群集で確立された方法を用い、餌料環境が希薄な外洋域においても同様の観測を行い、動物プランクトン非捕食死亡、ストレスと環境変動との関係について全球規模で考えることのできるデータを収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ストレス指標となる生化学分析の開発が順調に進み予定していた実験、予備分析を短縮することができたため、出張費や試薬代を節減することができた。研究協力者であるKam Tang博士の滞在期間が当初より短くなったため調査旅費等が節減された。 当初予定していた量よりも多くの試料を分析対象とする。また一部はKam Tang博士(平成26年1月に英国スウォンジー大学に異動)との論文とりまとめ打合せの旅費として使用する。
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