2013 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー分光同位体計測計を用いた大気環境の動態解明
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24310012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松見 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (30209605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 智喜 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (40377784)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / 温室効果気体 / レーザー分光 / レーザー同位体計 / 二酸化炭素同位体 / 水蒸気同位体 / 二酸化炭素発生源 / 都市大気 |
Research Abstract |
都市域におけるCO2濃度は人為起源の化石燃料燃焼による放出に加えて、植物の光合成によるCO2吸収、生物呼吸によるCO2放出過程も要因となりうるため、それぞれのCO2発生源の寄与の見積もりが難しい。そこで、名古屋市内において夏季、冬季にCO2濃度およびCO2安定同位体比の連続測定を行ない、夏季冬季におけるCO2発生源の差、また都市域における生物由来CO2の寄与について評価した。これまでの安定同位体比質量分析装置を用いた測定では、サンプリング回数が限られるため、数週間にわたる連続測定が難しい。しかしレーザー分光法を用いることで、時間分解能1分以下で、数週間の連続測定することができた。夏季(7月22日から8月11日)と冬季(11月22日から12月11日)において、名古屋大学キャンパス内においてCO2濃度およびCO2安定同位体比(δ13C, δ18O)の連続測定を行なった。CO2安定同位体比は中赤外レーザー(4.3 μm)を光源とするレーザー分光同位体測定装置を用いた。同時に水蒸気濃度、水蒸気の安定同位体比(δD, δ18O-H2O), CO濃度, NOx濃度を連続測定した。夏季のCO2濃度変動は日中に最小、夜間に最大となる日内変動を示したが、冬季のCO2濃度は規則的な変動が見られなかった。このため夏季は生物由来のCO2吸収放出の影響が大きく、日内変動が現れたと考えられる。冬季は人為起源CO2が主な発生源と考えられる。CO2濃度ピークのCO2の発生源をδ13C, δ18OのKeeling plot解析と、CO濃度変動とCO2濃度変動の相関(ΔCO/ΔCO2)の二つの側面から求め、夏季冬季の差を評価した。ΔCO/ΔCO2は冬季に高く、燃焼由来CO2の寄与が増加することが示された。さらにδ13Cを比較すると冬季が低くなった。そのため、冬季は天然ガス燃焼に起因するCO2の増加の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地球炭素循環における人間活動と生態系の役割を解明する上で、大気圏と生命圏の間の相互作用を詳しく調べることが不可欠である。大気二酸化炭素の濃度と同位体比の両方を解析することにより生態系-大気相互作用の定量的な解析を行うことができる。レーザー分光同位体計測器により大気中の二酸化炭素の13C,18O同位体比および水蒸気のD, 18O同位体比の連続測定を行い、従来からのO3, NOx, CO、エアロゾル計測と組み合わせて、大気質の動態を明らかにした。大気中の二酸化炭素の濃度・同位体比計測とデータ解析を行うことにより、これまでレーザー分光の研究者による実験的な装置開発でしかなかった二酸化炭素同位体分析装置が、実用化レベルに達していることを実証した。これまでの同位体質量分析法では実現できなかった、新しい計測を行うことができた。名古屋などの都市大気の同位体比を高い時間分解能および長い期間で計測することにより、CO2排出源すなわち土壌や植物呼吸、石油燃料燃焼、天然ガス燃焼由来であるかを明らかにできた。大気汚染関連物質のO3, NOx, CO, エアロゾルの観測を同位体分析と同時に行うことにより、都市における大気汚染物質などの動態について、より詳しい情報を得ることができた。このように、当初の計画通りの研究内容を推進することができ、順調に推進で来たと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続いて、レーザー分光同位体計測装置による大気二酸化炭素の濃度・同位体比計測結果から二酸化炭素の排出源の特定の方法を確立させる。また、レーザー分光同位体計測装置の問題点を明らかにし、その改善を行う。安定に長時間働かせるために必要な改造を行う。データの解析の自動化を図り、リアルタイムで解析できるようなシステムにする。地球上の二酸化炭素の循環サイクルを理解することは、地球温暖化やその将来予測にとって非常に重要である。すなわちCO2の排出、貯蔵、吸収、変換などをきちんと定量的に理解する必要がある。レーザー分光同位体計測装置により、名古屋大学において大気中の二酸化炭素の濃度および13C,18O同位体比の測定を行う。1分の時間分解能で数週間程度の連続測定を行う。この計測と同時に三次元風向風速計の計測を行う。このデータの解析により二酸化炭素の排出源の推定を行う。同位体比データを解析するに当たり、マスバランス法を用いる。マスバランス法は、観測した大気二酸化炭素の濃度および同位体比をマスバランスの式に当てはめ、それぞれの発生源を求める方法である。日本およびアジア大陸の大都市、工業地帯では、化石燃料の燃焼によるCO2を放出するだけでなく、大気汚染関連物質であるNOx, CO, 炭化水素、エアロゾルを放出する。これらが変質しながら観測点に到達する。従来から行っている大気汚染関連物質のO3, NOx, CO, エアロゾルの観測をCO2と水蒸気同位体分析と同時に行うことにより、都市における大気汚染物質などの動態について、より詳しい情報を得る。本研究で得られた結果をまとめて、成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用している二酸化炭素のレーザー同位体分光計の精度の向上のための改良装置の製作が、観測とそのデータ解析に時間を取られたために、間に合わなかったので、その装置の製作費を平成26年度に繰り越した。レーザー同位体分光計に導入する大気試料を二酸化炭素を含まない純空気で希釈して、試料大気中の二酸化炭素の濃度を常に一定にする改良装置である。この装置の改良自体は間に合わなかったが、観測とそのデータ処理は現状の解析には充分な精度でうまく行うことができたので、研究それ自体には影響はなかった。 二酸化炭素のレーザー同位体分光計の精度の向上のための装置の改良を計画している。二酸化炭素のレーザー同位体分光計の精度が、試料大気中の二酸化炭素の濃度に依存してしまう現象がある。同位体比が分かっている種々の濃度の標準ガスでレーザー同位体分光計を校正することにより、ある程度は補正が可能である。しかし、より精度を上げるためにはレーザー同位体分光計に導入する大気試料を二酸化炭素を含まない純空気で希釈して、試料大気中の二酸化炭素の濃度を高い精度で一定にする必要がある。そのための装置の製作部品の購入に使用する予定である。
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[Presentation] 大陸から飛来するPM2.5に含まれる重金属成分の挙動~個別粒子レーザーイオン化質量分析とフィルター採取による化学分析~2013
Author(s)
Takehiro Hidemori, Tomoki Nakayama, Yutaka Matsumi, Akihiro Yabushita, Masafumi Ohashi, Naoki Kaneyasu, SATOSHI, IREI, Akinori Takami, Ayako Yoshino, Ryota Suzuki, Yayoi Yumoto, Shiro Hatakeyama
Organizer
日本地球惑星科学連合2013年大会
Place of Presentation
幕張メッセ 国際会議場
Year and Date
20130519-20130524
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