2014 Fiscal Year Annual Research Report
海洋性珪藻における無機炭素獲得分子動態のモデリング
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24310015
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松田 祐介 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30291975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 伸介 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90263219)
佐藤 英俊 関西学院大学, 理工学部, 教授 (10300873)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 環境変動 / 水圏現象 / 植物 / 海洋性珪藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海洋性珪藻が無機炭素を細胞内に取り込み効果的に固定する系(CO2濃縮機構:CCM)と、その系がCO2濃度、pH、温度、および鉄などの環境因子へ応答する仕組みが、海洋一次生産性変動の重要因子であるという仮説に基づき、1.海洋性珪藻類の無機炭素取込と蓄積を担う分子機構を同定すること、2.この分子機構を担う遺伝子の環境変動下における発現動態分析、およびこれに基づく一次生産性変動予測動態モデルの構築、を目的としている。 平成26年度における実施項目と成果の概要を以下にあげる。1.無機炭素輸送に関わると考えられるタンパク質の機能同定:重炭酸イオン輸送体タンパク質遺伝子solute carrier(SLC)群を珪藻に過剰発現し、そのエフェクター分子を同定した。また、これら遺伝子の発現量解析からSLC4-1がCO2欠乏下で働く主要な重炭酸輸送体であることが分かった。一方、CO2チャネル候補として機能解析を行っているアクアポーリンのうち一種がCO2とアンモニアイオンの輸送を担うことが示唆されている。2.葉緑体内および周辺部に局在する炭酸脱水酵素(CA)、C4関連代謝酵素の機能解明:これら局在解析を2種のモデル珪藻で完了した。現在、それぞれのCAを過剰発現或いは発現抑制し、その機能解明を行っている。また、葉緑体局在因子としてピレノイドに局在する新規タンパク質遺伝子数種の取得に成功した。3.これらタンパク質のCO2(pH)、温度、鉄濃度に対する応答の定量的解析:既知の対象遺伝子について引き続き再現性を取る一方、解析候補タンパク質が増加したため、これらについても順次解析を進めた。4.環境変動に伴う油脂、炭化水素、クロロフィル相対比の動態解析:油脂と炭化水素のラマン分光による非破壊解析技術を確立した。この技術を用いて、変動環境下における貯蔵物質の変動解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海洋性珪藻の無機炭素輸送体として、2013年度に機能解析を完了したPtSLC4-2に加え、4種の新たな候補を取得した。このうち、2種の輸送体についてはその機能確認を行い、PtSLC4-2に類似したナトリウム依存型重炭酸イオン輸送であることを確認している。また、CO2チャネル候補としてアクアポーリンの取得を終え、この機構確認が順調に進行している。一方、CO2濃縮を可能にする葉緑体およびピレノイドの新規構成成分をいくつか取得して、それらの機能確認段階まで進んでいる。また、炭酸脱水酵素とC4有機酸代謝酵素の局在を終えて、珪藻におけるCO2濃縮経路を2つにモデル化している。これらCCM因子の変動環境下での発現プロフィールは順次解析しており、動態変動モデルを構築する情報を蓄積している。また、油脂、炭化水素の変動環境下での蓄積をラマンや近赤外スペクトルを用いた非破壊解析で分析しており、モデル構築に組み込んでいく予定である。これら成果の一部を2014年度に複数の査読付き国際誌に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに遂行する。2015年度は細胞膜型重炭酸水素イオン輸送体の詳細な機能解析を完了し、葉緑体型重炭酸水素イオン輸送体の機能解析およびCO2チャネルと考えられるアクアポーリン等の機能解析を進める予定である。一方、CO2濃縮場の主役となっていると考えられる葉緑体とその中心ボディーであるピレノイドの生化学的構造と機能について、遺伝子の取得を終え、その機構解析を進めてゆく。これらの作業により、細胞外から葉緑体内部までの無機炭素の速やかな調達の仕組みとその環境応答生を明らかにし、これに細胞内基質の変動情報を加えたモデルを構築し、そのモデルを適宜新情報で充実してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
PCR用のプライマー、特異的抗体など、研究の進捗状況に合わせてオーダーメイドする予定の生化学・分子生物試薬について、一部が設計段階で年度を超えてしまったため、発注が2015年度にずれ込むことになった。これは、当初予測していたよりも多くの候補分子が取得され、その選別と優先付けに時間を要した為であるが、より多くの候補因子が得られていることから、計画の遅延ではない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、年度を跨いで設計している上記オーダーメイドタイプの生化学・分子生物試薬の設計を完了し、2015年度に作製する。
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Research Products
(53 results)