2013 Fiscal Year Annual Research Report
微小球状粒子の元素組成分析による東アジア越境汚染の長期時空間変動解析
Project/Area Number |
24310023
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥平 敬元 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20295679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 淳 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (90514456)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境分析 / 環境変動 / 地球化学 / 越境汚染 |
Research Abstract |
本年度は新たな試料採取は行わず,これまで東アジア地域(日本,中国,韓国,台湾)で採取してきた試料に含まれる球状炭化粒子(SCPs)の表面化学分析とデータ解析を集中して行い,成果の中間的なまとめを行った.その結果,日本で採取されたSCPsの化学的特徴は,韓国で採取されたものと類似し,中国・台湾で採取されたものとは明瞭な違いがあることがほぼ確定した.これは,SCPsの化学組成を用いてその排出国を推定することが,東アジア地域においては可能であることを示唆する.西日本の日本海における離島(隠岐,壱岐,五島列島)は本邦近隣工業地帯から数百km離れているため,より長距離輸送されたSCPsを観察することができると期待される.実際,これら離島で観察されるSCPsは,粒径が10ミクロン程度のものがほとんどである.これら離島で採取されたSCPsの化学組成の検討の結果,これら離島が日本や韓国に比較的近いにもかかわらず,これらSCPsは中国で特徴的に観察される化学組成を示す粒子が,全体の40%程度を占めることが明らかとなった.この結果は,中国由来のSCPsが,日本(少なくとも西日本)に飛来していることを示唆する.また,本年度に行ったこれまでの研究の総括より,SCPsの含有量はPCB,硫黄酸化物,一部の金属元素などの汚染物質の指標になることが示唆された.よって,離島における中国由来のSCPsの存在は,中国の産業活動に関連したこれら汚染物質も離島に飛来していることを示唆する.このようにSCPsは,その発生源を特定する上で有用であり,越境汚染の指標となり得ることが確認された. これまでは表層堆積物を用いた研究を行ってきたが,今後は柱状堆積物試料を用いることにより,中国由来SCPsの時空間分布を明らかにして行くことが重要である.このような観点から来年度は,香港における柱状堆積物試料の採取を予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初,香港における柱状堆積物試料の採取を予定していたが,現地研究協力者との日程調整が上手くいかず,試料採取は行わなかった.本年度はこれまで国内外で採取してきた表層堆積物試料中のSCPsの表面化学分析とデータ解析を集中して行い,これまでの成果の中間的なまとめを行った.この作業と平行して2編の原著論文(英文)と1編の総括論文(邦文)を執筆し,前者はすでに国際学術雑誌に投稿中である.よって,本研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,香港の貯水池において柱状堆積物試料の採取を行う.この香港での試料採取は,香港大学の安原盛明准教授と協力して行う.採取した試料よりSCPsを抽出し,SEM-EDSにより表面形態観察,化学組成分析を行い,中国工業地帯における,SCPs化学組成の経年変化を明らかにする. 平成26年度は最終年度であり,これまでの成果の総括を行い,西日本における離島と東アジア各工業地帯のSCPsの元素組成・表面形態を比較し,西日本に飛来しているSCPsの供給源とその変遷を明らかにする.この成果をもとに,学術論文を作成・投稿する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は当初,香港における柱状堆積物試料の採取を予定していたが,現地研究協力者との日程調整が上手くいかず,試料採取は行わなかった.また,本研究の根幹であるSCPsの表面化学組成分析に用いる電子顕微鏡(SEM)の補修が急遽必要となったため,研究計画を大幅に変更せざるを得なかった. 平成26年度に香港における柱状堆積物試料の採取を予定しているため,その経費として使用する目的で,国内旅費として計上していた14,500円を次年度に繰り越すことにした. 平成26年度に繰り越す14,500円は,当初旅費として計上していた平成26年度の経費と併せて,香港における柱状堆積物試料採取のための旅費として使用する予定である.
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