2013 Fiscal Year Annual Research Report
慢性ヒ素中毒における免疫機能障害の関与に関する研究
Project/Area Number |
24310048
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (30400683)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性ヒ素曝露 / ナチュラルキラー細胞 / 脾臓 |
Research Abstract |
本研究では「生体の免疫機能がヒ素化合物によって障害を受け、 それがヒ素による健康障害の増悪因子になったのではないか」と仮説を立て、研究を進めている。昨年度までの結果から、亜ヒ酸がナチュラルキラー細胞の癌細胞に対するキラー活性を阻害することを見出した。本年はその機序を明らかにすること、ならびに亜ヒ酸に短期および長期に曝露されたマウスのNK細胞のキラー活性について検討を行った。 ヒト培養ナチュラルキラーNK92細胞の亜ヒ酸への曝露によるキラー活性の阻害に関わる因子の探索を行ったところ、IFNα8やIFN13などのサイトカイン、Spleen tyrosine kinaseやprotein kinase Cαなどのシグナル活性化因子、さらに抑制性受容体であるKIR2DL3の発現が亢進していた。また、IL-2によるNK92細胞のキラー活性の活性化時における亜ヒ酸の影響について検討を行ったところ、やはり亜ヒ酸はIL-2によるキラー活性の活性化を阻害することが明らかとなった。その機序を明らかにするために、IL-2 添加によるNK92細胞のmRNA発現量の変動を検討したところ、IFNγや、GranzymeBやPerforin1などの細胞障害性因子が著しく上昇していた。そこでこれらの因子に対する亜ヒ酸の影響を検討したところ、GranzymeBは亜ヒ酸により減少していたが、Perforin1の発現に変動は見られなかった。 亜ヒ酸を1週間連続的に腹腔内に投与した後の脾臓NK細胞を採取しキラー活性を測定したところ、予想に反して亜ヒ酸曝露によって有意に上昇した。一方、3ヶ月および6ヶ月間飲水にて投与したマウスを用いた検討では、有意な変動は検出されなかった。さらに、コントロールマウスから採取したNK細胞をIL-2により活性化させた状態での亜ヒ酸曝露は、そのキラー活性を有意に減少させた。現在、その機序について詳細に検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は, ヒ素化合物による免疫担当細胞の機能障害に焦点を当てた研究内容であるが, 平成25年度はNK細胞のキラー活性に対するヒ素化合物の阻害効果に関わる機序について検討を行い、いくつかの候補となる因子を同定した。また亜ヒ酸に曝露されたマウスの脾臓からNK細胞を採取したところ、キラー活性に変動はなかったが、サイトカインのIFN-gamma産生が減少することを見出した。 よって, 本研究は「おおむね順調に進展している」と考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ヒトサンプルを使用した研究を主に進めていこうと考えている。バングラデシュのヒ素汚染地域住民から頂いた血清中のサイトカイン濃度をBioplex(一度に12-26種類測定可能)で測定し、NK細胞の活性化に関わるサイトカイン産生がヒ素曝露地域住民で変動しているかについて検討を行う。 また、培養NK細胞を用いた検討によりヒ素化合物によるキラー活性の阻害作用において同定された候補因子について、ヒ素化合物の曝露によるその活性変動および発現機序などについて検討を進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(c-d)に701円を計上したが, これは平成24-25年度に受けた学術研究助成基金助成金の利息により発生したものである. 平成26年度の物品費に用いる予定である.
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Research Products
(7 results)