2013 Fiscal Year Annual Research Report
BT殺虫性タンパク質のエッセンスでタンパク質殺虫剤を創る
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24310054
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 令一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30235428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩淵 喜久男 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00203399)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境材料 / 農薬 / Bacillus thuringiensis / Cry toxin / ABCC2 |
Research Abstract |
受容体に対して結合性を高める進化分子工学を実施して殺虫性タンパク質の殺虫活性を高める方法、あるいは活性の範囲を広げる方法の確立が本研究の目的である。そのためにはまず、5種類もある受容体のうちのどれが真の受容体であるかを明らかにして、その受容体を利用した活性発現の在り方を明らかにする必要がる。また、殺虫性タンパク質上の受容体結合部位を明らかにする必要がある。今季は以下のような成果を得た。 1)Bt殺虫性タンパク質のABCトランスポーターC2を介した作用機構の解析:①カイコガ由来のABCC2(BmABCC2)をBaculovirus システムで大量に発現させて精製し、バイオセンサーBiacoreを用いてBt殺虫性タンパク質Cry1Aa型毒素のBmABCC2との結合特性の解析を行った。その結果、BmABCC2分子にCry1Aaは高い親和性で結合し、解離はきわめてゆっくりであることが明かになった。② BmABCC2が持つATPのエネルギーを利用した構造変換能力や物質排出能が受容体機能に必須であるかに関して検討したところ、ATPase機能を破壊したと思われるどの変異もBmABCC2発現細胞の感受性を低めなかった。③アフリカツメガエル卵母細胞にBmABCC2を発現させ、Cry1Aaを作用させると電流が流れるチャネルが継続的に増加することが明らかになった。また、このCry1Aaにチャネルを作らせる機能は第2の受容体候補分子カドヘンリン様タンパク質よりも数百倍高く、BmABCC2が最も重要な受容体であることが示唆された。 2)殺虫性タンパク質分子上のABCC2結合領域の解析:①ループ2,3部位に連続4アミノ酸変異体をもつCry1Aaの多くはABCC2発現細胞に対する活性を失っているものが多く、この領域がBmABCC2との相互作用に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
殺虫性タンパク質の進化分子工学による活性改善系を確立するために必要な基盤知識の獲得は予想以上に順調に進行している。一方、具体的に進化分子工学の手法を確立するためには、「進化が成立したことが容易に評価できるモデル系」が必要であり、そのの確立のためには、まず様々な殺虫性タンパク質と昆虫のABCC2を組み合わせた多数の系を試す必要がある。しかし、真の受容体分子の決定とその分子ABCC2の精製法の確立が遅れたのでその部分が多少遅れ気味である。とは言え、当初の企画以上に真の受容体分子に関する深い知識が得られたので、「進化が成立したことが容易に評価できるモデル系」に関して豊かなアイデアが得られた。よって結果的にはむしろ当初よりも大きな成果が上がっているともいえなくはない。
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Strategy for Future Research Activity |
殺虫性タンパク質の進化分子工学による活性改善系の確立に向けて、2方向からの「進化が成立したことが容易に評価できるモデル系」の作製を試みる。1つはこれまで作用機構解析の対象素材としてきたCry1Aa型の殺虫性タンパク質を用いる系である。まず、1)Cry1Aaが効かない昆虫を明らかにし、次に2)効かに原因がABCC2との不親和の関係にあることをバイオセンサーBiacoreのシステムで確認し、3)その不親和のABCC2のcDNAをクローニングし、4)Baculovirus発現系で昆虫培養細胞Sf9に発現させて、その細胞を用いてアッセイに供する「Cry1Aaが効かない培養細胞」を作り上げ、6)現在進めているCry1Aa上のカイコABCC2結合領域の解析を更に進め、7)ABCC2結合領域に変異を入れたCry1Aaをファージ上にディスプレイした変異体ライブラリーを作り、8)不親和ABCC2をコートしたプレートで結合性を増した変異体のスクリーニングを実施し、9)そのなかから「Cry1Aaが効かない培養細胞」に対して効き目を増した変異体を選別し、10)変異部位のアミノ酸配列を明かにし、11)Cry1Aaが効かない昆虫に効くようになったことを確かめる。また、第2の系は、カイコにあまり効かないCry8Aaを用いる系である。まず、1)効かに原因がABCC2との不親和の関係にあることをバイオセンサーBiacoreのシステムで確認し、2)Cry8Aa上のカイコABCC2結合領域の解析を進め、3)ABCC2結合領域に変異を入れたCry1Aaをファージ上にディスプレイした変異体ライブラリーを作り、上と同様の考え方で変異体の取得を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は35,091円で微調整の範囲であり、特段の理由はない。 次年度使用額は35,091円で微調整の範囲であり当初の予定通りに使用する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] The ATP-binding cassette transporter subfamily C member 2 in Bombyx mori larvae is a functional receptor for Cry toxins from Bacillus thuringiensis.2013
Author(s)
Tanaka, S, Miyamoto, K, Noda, H, Jurat-Fuentes, JL, Yoshizawa, Y, Endo, H, Sato, R.
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Journal Title
FEBS Journal
Volume: 280
Pages: 1782-94
DOI
Peer Reviewed
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