2012 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギーデバイス用フッ素系イオン液体の非焼却分解・再資源化反応システムの開発
Project/Area Number |
24310061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
堀 久男 神奈川大学, 理学部, 教授 (50357951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永長 久寛 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90356593)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イオン液体 / 分解 / 亜臨界水 / 超臨界水 / フッ素 |
Research Abstract |
不燃性や耐薬品性に優れたフッ素系イオン液体は電力貯蔵や電気自動車、電子機器等に使われる様々なエネルギーデバイスにおいて、電解質材料等としての導入が進んでいるが、廃棄物の分解処理方法が確立されていない。高温での焼却は可能であるが単に高エネルギーが必要なだけでなく、発生するフッ化水素ガスが焼却炉材を損傷する問題がある。このような背景から本研究では焼却によらない、低エネルギー的な手法でこれらを分解処理する方法を開発することを目的としている。24年度は代表的なフッ素系イオン液体であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CF_3SO_2)_2N^-について、まず亜臨界水(~350℃)中で様々な酸化剤や還元剤を添加して分解させることを検討した。これらの物質は純粋な亜臨界水中では分解しなかった。酸素ガスを添加して酸化分解を試みたが、その場合もほとんど分解しなかった。このように酸化的な分解が生じにくいことが分かったため、鉄粉を用いて還元分解することを試みた。その結果、フッ化物イオンまでの分解が顕著に起こることが分かった。そこで温度を超臨界水状態(375℃)まで上昇させ、時間も延長して反応を行ったところ、フッ化物イオンの収率(反応前のフッ素原子数を基準とした値)は76.8%となり、効果的な無機化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的なイオン液体であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CF_3SO_2)_2N^-について、鉄粉を添加した亜臨界水反応によりフッ化物イオンまで効果的に分解・無機化することに成功したのでおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)鉄粉の種類を変えた反応 24年度に代表的なフッ素系イオン液体のアニオン種であるビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド類のうち、(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[(CF_3SO_2)_2N]^-が粒径54μm以下の鉄粉を還元剤として、亜臨界水もしくは超臨界水中で反応させることでそのフッ素分が効果的にフッ化物イオンまで分解・無機化できることが分かった。そこで性状(表面積、気孔存在量、結晶化度、一次粒子径、結晶構造等)の異なる様々な鉄粉(アトマイズ鉄粉、カルボニル鉄粉等)を用いた反応を行い、鉄粉の性状が反応に与える影響について検討する。 課題(2)イオン液体の種類を変えた反応 [(C_4F_9SO_2)_2N]^-に加えて[(C_4F_9SO_2)_2N]^-等のアルキル鎖長が異なるもの、さらにはアルキル鎖の分岐が異なる種々のビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド類を温度、圧力、処理時間等を変えながら系統的に鉄粉と反応させ、フッ化物イオンまでの分解の効率化を目指す。また、水中に溶出する化学種の構造変化をATR-IR、エレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)等で、鉄の状態の変化をXPS、ATR-IR、ラマン分光法等で測定する。この結果と生成物の分布の傾向とを考え合わせ、還元剤の表面にどの部位で吸着するのか、脱フッ素化はどの部位から起こるのか等を解明する。さらに構成元素(フッ素、炭素、硫黄、窒素)に関して、ガス成分まで含めたトータルマスバランスを測定し、反応の全容を解明する。 課題(3)鉄化合物を用いた反応 鉄粉を還元剤として使用することで効果的に[(CF_3SO_2)_2N]^-を分解できることが分かったが、鉄粉は対象物質のみならず亜臨界水あるいは超臨界水自体とも反応し、消費されてしまう。ここでは鉄化合物としてFeOを使うことを検討する。FeOは高温で不均化してゼロ価の鉄を生じることが知られている。そこで亜臨界水もしくは超臨界水の反応場において鉄を生じさせ、対象物質と効果的に反応するか調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度実績報告書(収支決算報告書)に記載した直接経費次年度使用額573,391円が生じた原因は、アルバイトの実労働時間が計画を大幅に下回ったためである。この金額については25年度に再度アルバイトの雇用のために使用する。25年度は物品費197万円(消耗品で主にガス、試薬類、配管バルブ類)、旅費50万円(フランス・パリで開催される第17回欧州フッ素化学会議、環境化学討論会、日本化学会春季年会等への参加と発表)、人件費200万円、その他(英文校閲}10万円を予定している。
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Research Products
(5 results)