2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒザラガイの磁鉄鉱を主成分とする歯の形成メカニズム解明と環境・材料科学への応用
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24310064
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
沼子 千弥 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80284280)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒザラガイ / 歯舌 / 高濃度濃集 / 希土類元素 / キチン / リン酸化 / 吸着能 |
Research Abstract |
石巻、沖縄、徳島で採集したヒザラガイの歯舌を樹脂包埋し、正中線まで研磨を進めた切片試料に対し、まずレーザーアブレーション-MSとマイクロPIXEによる2次元元素マッピングを行った。ヒザラガイの歯の摂餌面には鉄、背面にはリン酸カルシウムが濃集するが、その他摂餌面にはCo, Cu, Niが、背面にはSrなどのアルカリ土類金属と希土類元素がそれぞれ微少量共存することがわかった。Srについては放射性同位体比について検討を行う予定であったが、Srの含有量が小さく、東北地方で採集されたヒザラガイとその他の地域の間で有意差を得ることができなかった。次に希土類元素についてICP-MSを用いてより高感度な元素分析を行い、海水で規格化してREEパターンを求めたところ、成熟した歯と比較して歯の形成初期ではCeの正の異常とHREEの高濃縮が確認された。 これと平行して、歯舌のマトリクスであるキチンに対するCaとFeの吸着能を評価するために、実験室系での吸着実験を行った。特に、多糖質であるキチンは官能基をリン酸化することにより、より高い金属イオンの吸着を示すことが期待されたため、通常のαキチンとリン酸化したキチンについて、海水と同じpH条件下における吸着能の差異を比較した。その結果、リン酸化により、Ca, Feの吸着能が向上することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
天然に生息するヒザラガイの採集について、沖縄・徳島などの非汚染地域では計画通り実施することができたが、東北地方、特に福島県の海岸域について、複数回採集を試みたにもかかわらず、ヒザラガイを発見することができなかった。これは、2011年の地震と津波の影響で海岸域の生態系がまだ十分回復していないこと、ヒザラガイの生息する岩礁帯が立ち入り禁止区域に多く存在し、現時点では採集を実施できないことが大きな原因である。宮城県中部の石巻の海岸では十分数のヒザラガイの生息を確認することができたが、これらについては放射性同位体の濃集を確認することができなかったため、当初の目的の、汚染地域の環境モニタリングとしては適していないことがわかった。 最も放射能汚染の顕著な福島県でのヒザラガイを入手することが重要であり、平成25年度では、これを達成することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒザラガイの歯舌の形成環境と同様の、常温・常圧、中性付近での湿式による磁鉄鉱形成を、実験室系で再現することを試みる。この検討は既に九州大学理学部化学の横山拓史教授と共同で始めており、合成環境の中で鉄を酸化・還元する共存元素が存在すると、中性付近でも磁鉄鉱が選択的に形成されることを予備的な知見として得ている。これに、本研究で計画している、ヒザラガイの体内での鉄化合物の動態が加わると、磁鉄鉱形成に関連する鉄化合物とその存在器官を特定することができ、またその部位の共存元素から、実験室系でのヒザラガイの磁鉄鉱形成再現のためのシステムを設計することが可能となる。 加えて、ヒザラガイの歯舌の基質となっているキチンの共存下、もう一つの主成分であるリン酸カルシウムの共存下で、磁鉄鉱の形成がどのように進行するかを観察する。さらに、キチン表面の官能基修飾やキチンの結晶の配向などにより、磁鉄鉱の自己組織化が可能になる条件を模索する。 また、本年度はオーストラリアでのヒザラガイの採集も実施し、元素濃集の種による差異や地域差について、日本と対応させながら検討する。同時に、日本でのヒザラガイの採集についても、継続して実施し、経時変化についてもデータを蓄積する。特に、まだ実現できていない、福島地域でのヒザラガイの採集地域検索について重点を置く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費については、ヒザラガイの採集について、東北地域の採集箇所の探索に重点を置いたため、当初計画していたオーストラリアでの採集を実施することができなかった。当初人件費・謝金とその他を200千円ずつ計上していたが、H26にこの利用が必要な研究内容を移行したため、H25はほとんど利用しなかった。 次年度でオーストラリアでの採集を実施し、研究計画を調整する。また国内での採集でもレンタカーが必要なことを確認したため、その他の項目から利用する。試料採集やデータ整理に人件費・謝金を利用する。
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Research Products
(1 results)