2013 Fiscal Year Annual Research Report
石綿肺早期発見と病態解明をめざすイオンビームを応用した新手法の開発
Project/Area Number |
24310067
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
土橋 邦生 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (00241894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 隆博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究員 (10370404)
石塚 全 福井大学, 医学部, 教授 (50302477)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アスベスト / 石綿肺 / 大気マイクロPIXE / 職業性粉塵暴露 / イオンビーム / 肺線維症 / 組織内元素分布 |
Research Abstract |
アスベスト関連肺疾患の病態解明や診断における有用性につきこれまでの成果をまとめた総説が学術雑誌に受理、公表された。(Curr Med Chem. 2013 Feb 1;20(6):789-93.) 発癌、線維化の病態解明では、マウスシリカモデルにおいて、吸入されたアスベストに体内の鉄が沈着しアスベスト小体を形成することを明らかとし、米国胸部疾患学会に今年度発表し、現在論文作成中である。酸化ストレスによる肺の線維化にRho-associated coiled-coil containing protein kinaseが、重要な役割を果たしていることを明らかとした。(Int J Immunopathol Pharmacol. 2014 Jan-Mar;27(1):37-44.)現在、アスベスト周囲の組織にEGFRやALKなどの遺伝子変異があるか検討している。 粉塵吸入が疑われる肺線維症の患者の吸入粉塵の同定については、他施設から5症例の肺生検検体が送付された。大気マイクロPIXEによる解析から、このうち1症例において職場で扱っているアルミニウムが、多量に肺組織に沈着していることを明らかとし、職場でのアルミニウムの吸入が肺線維症の原因であると同定できた。この症例は、呼吸器学会関東地方会にて発表し、現在論文作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までの本プロジェクトにより得られた成果を総説論文として発表できた。 発癌、線維化の病態解明では、マウスモデルでアスベスト小体の形成を明らかとし、また肺線維化に関する論文も発表できた。現在、アスベスト周囲のEGFRやALKの遺伝子変異を検討中であり、順調である。気管支鏡採取肺組織による石綿肺の早期診断では、現在、気管支鏡サンプルを大気マイクロPIXEにて測定中である。粉塵吸入が疑われる肺線維症の患者の吸入粉塵の同定については、今年度他施設からの依頼も増え、職業性アルミニウム吸入による肺線維症患者であることを証明し、その成果も発表できた。今後さらに依頼が増えることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
①発癌、線維化の病態解明については、26年度は、24-25年度に引き続き、石綿肺の患者の肺組織を使い上記測定を行う。すでに、石綿肺のケイ素分布に一致してFasの発現が増加していることを報告している。現在肺組織に沈着したアスベストの周囲にEGFRやALKの遺伝子変化が存在するかを検討中である。 ② 気管支鏡サンプルによるアスべスト肺の早期診断法の確立に関しては、引き続き気管支鏡サンプルでの測定を継続し、統計解析をおこない早期石綿肺診断基準を策定する。今年度も引き続きサンプル数を増やす。 ③ H25年度に引き続き、全国より粉塵吸入が疑われる患者のパラフィン包埋肺組織を送付してもらい、大気マイクロPIXEにて解析し、職業性粉塵吸入と病変と間の因果関係につき検討し、粉塵の種類の同定までおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大気マイクロPIXEの使用時間に上限があるため、25年度に行う予定のいくつかの検体の処理とPIXEによる測定ができなかったため26年度に延期した。そのため次年度使用額が生じた。 25年度予定の実験については、26年度の早々におこなう予定である。また、大気マイクロPIXEの使用時間をより多く確保すべく、高崎量子応用研究所に追加使用の要望を出すこととした。
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Research Products
(5 results)