2014 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームマルチスケール評価法を用いた癌温熱治療中に生じる散逸構造の解明
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24310071
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
間宮 広明 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30354351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 典樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主任研究員 (60442993)
B JEYADEVAN 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (80261593)
篠原 武尚 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究副主幹 (90425629)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子ビーム医療応用 / ハイパーサーミア / ナノ粒子 / 非平衡定常状態 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁性ナノ粒子を用いた癌温熱療法ではその医学的効能の有無が焦点となってきたため,発熱モデルとしては熱平衡状態からの線形応答といった単純な模型が用いられてきたが,必ずしも実験事実と一致するわけではなかった.最近,代表者らは,癌温熱療法条件下での磁性ナノ粒子の振舞についてシミュレーションを行い,従来の通念とはかけ離れた非平衡定常構造,例えば,孤立した磁性ナノ粒子において交流磁場中で磁場方向に垂直な面内に磁化容易軸・磁化ベクトルが配向した構造等,が現れることを初めて見出し,そうした構造に発熱の最適条件が大きな影響を受けることを示した.そこで,本研究では,粒径・形状を制御され素性の明らかな磁性ナノ粒子を合成し,それらの個別/集団での振舞がシミュレーションの予測と一致するかどうかを,透過力の高い量子ビームを用いたマルチスケール評価法で検証し,癌温熱療法の最適設計に不可欠な基礎的知見の確立を目指している. 本年度は,昨年度にオレイン酸とオレイルアミンの混合溶液(無溶媒)中の熱分解法で合成した10-20 nmのサイズのナノ粒子のコロイド溶液を,小角散乱用直流・交流磁場印加装置に設置し,その場観察用セルを透過可能なモリブデン特性X線の散乱を計測することで,磁場中での配向状態を評価した.この結果の詳細な解析を進めているところではあるが,現在,得られた情報は概ねシミュレーションの予測と一致した.ただし,より詳細な検証には粒子間双極子相互作用の厳密な制御も必要であることが明らかとなったため,シリカコートした酸化鉄ナノ粒子の合成を試み,被覆厚,すなわち相互作用強度の異なる一連の試料の作製に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モリブデン特性X線を用いた直流・交流磁場印加下での小角散乱による内部ナノ構造その場観察が進捗しているほか,新たに必要となった粒子間双極子相互作用の制御もシリカコートした酸化鉄ナノ粒子の合成によって見通しが立ったため,全体としてはおおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた合成法,シミュレーション法,あるいは評価法に関わる知見と技術を駆使し,癌温熱療法条件下での磁性ナノ粒子の振舞についての予測とその検証を進めていく.
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Causes of Carryover |
粒子間双極子相互作用の制御等新たな要請に対応するため,試料合成・マシンタイム確保の時期に変更が生じ,結果としてその場観察等に係る消耗品購入額が減少したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試料準備等の見通しも良好となったため,次年度は使用量の増大が見込まれる消耗品の購入に充てる計画である.
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Research Products
(13 results)