2012 Fiscal Year Annual Research Report
モノマー配列でプログラミングされたらせんキラルポリラジカル磁気秩序と磁気光学機能
Project/Area Number |
24310081
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
金子 隆司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90272856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 俊樹 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80212372)
寺口 昌宏 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30334650)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | π共役高分子 / 光学活性らせん構造 / ポリラジカル / アントラセン / ポリ(アリーレンエチニレン) / ポリ(フェニルアセチレン) / 磁気光学効果 / 分子磁性 |
Research Abstract |
本研究では、ポリラジカルの磁気的性質とらせん構造高分子の光学活性との融合による新しい磁気機能および磁気光学機能を創出することを目的としている。この目的を達成するため、具体的には、ポリラジカル連鎖のモノマー配列としてプログラムされた精密ならせん構造を構築し、その磁気秩序構造制御の深化を目指した。本年度は、次の項目について明らかにした。 1.モノマー配列を制御したキラルポリ(1,3-フェニレンエチニレン)型ポリラジカルの合成 3,5-ジヨードフェニルヒドロガルビノキシルと2,6-ジ-t-ブチルフェノール残基と光学活性な1-フェニルエチルアミノカルボニル基を有する3,5-ビス[(3-エチニルフェニル)エチニル]ベンゼン誘導体をPd(PPh_3)_4触媒によりクロスカップリング反応させることで対応するポリ(1,3-フェニレンエチニレン)誘導体を新規に合成した。モノマー単位として1量体と3量体を重合させることで、らせん折り畳み構造形成時にヒドロガルビノキシル残基とフェノール残基が交互に積層する構造のポリマーを合成できた。また、水素結合性の光学活性基を有することから、ジクロロメタン溶液中で片巻優先のらせん折り畳み構造を形成した。さらに貧溶媒であるメタノールを過剰に加えることで、疎溶媒効果によりよりらせん構造形成側に平衡が偏った。ガルビノキシルアニオンを形成させることで90%メタノール溶媒でも可溶となり、CDシグナル強度が増大すると共にガルビノキシルアニオンの吸収領域にもCD吸収が観測された。これを化学酸化することでキラルポリラジカルが得られたが、CDシグナル強度は減少した。 2.ポリ(1,2-フェニレンエチニレン-1,2-フェニレンビニレン)誘導体の合成 フェノール残基を有する2量体マクロモノマーを合成・重合することで、フェニレンエチニレンユニットとフェニレンビニレンユニットが交互に結合した共役ポリマーを合成した。2-ブロモ-2'-エチニルスチルベン誘導体をモノマーとしてPd(PPh_3)_4触媒存在下重合することで、2-ブロモ-2'-ビニルトラン誘導体をモノマーとした場合に比べて高分子量体が得られた。紫外可視およびNMRスペクトルから、クロロホルム溶液にメタノールを加えることで疎溶媒効果によりらせん構造形成側に平衡が偏ることが示唆された。 3.水素結合でモノマー配列をプログラムしたオリゴアントリレンエチニレン誘導体の合成 エチニル基にN, N'-ジメチルベンズアミジンを結合した1,8-ジエチニルアントラセンとエチニル基に安息香酸を結合した9,10-ジエチニルアントラセンを混合することで、9,10-ジエチニルアントラセンユニットが水素結合により折り畳まれた構造を形成することを可視スペクトルの淡色効果から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、アリーレンエチニレンを骨格とした基本的なマクロモノマーおよびシークエンス制御ポリマーの合成法についてはその方法論を確立した。6/1らせん体では、分子内水素結合可能かつ光学活性なポリ(1,3-フェニレンエチニレン)型ポリラジカルの合成に成功し、3/1らせん体では、ポリ(1,2-フェニレンエチニレン-1,2-フェニレンビニレン)誘導体を合成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果を元に試料を量合成し、溶媒、添加剤、温度など外部刺激によりらせん構造を制御する条件を探索すると共にらせん状のラジカル配置と磁気的相互作用の相関を明らかにする。らせんの光学純度が低い場合は、分子内架橋によりらせんを固定し、光学分割したキラルポリラジカルも合成し、光学純度との関連を議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の合成では、予想より小スケールで確認実験ができたため、助成金を繰り越すことができた。このため、本年度は、経費を量合成に使用することができ、余裕を持った試料準備ができることとなり、より精度の高い物性計測実験ができる予定である。
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