2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24310083
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
石田 敬雄 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノ材料研究部門, 研究グループ長 (40281646)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子素子 / 金属錯体 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はRu錯体多層膜の超構造の形成錯イオンを変えることによる電子移動能の長距離化について主に研究を行った。X線光電子分光でRu錯体多層膜を形成する金属イオン種を変えることにより、多層膜の形成状態が変わることを調べた。その結果、従来まで自己組織化多層膜形成に用いられていたジルコニウムイオンに比べ、鉄イオン、イリジウムイオンでも多層膜が形成できること、特に鉄イオンでは分子が垂直に配向するために膜厚が厚くなることが分かった。またこれらイオン種を変えたRu錯体多層膜の電子移動能をサンドイッチセルを用いて、減衰定数ベータ値が金属イオン種に依存するかどうかについても調べた。その結果、ジルコニウムイオンではベータ値が1オングストロームあたり0.06程度であったが鉄やイリジウムイオンを用いた多層膜では0.01まで減少し、より長距離の電子移動が生じていることが分かった。電気化学測定から鉄やイリジウムイオンで形成した多層膜では、層間に電子移動をプロモートする準位が形成されることが示唆され、その結果、より高い長距離電子移動能が生じたと判断した。これらの結果は現在論文化を目指して取りまとめている。 また今年度はそれだけでなく孤立したRu錯体分子の液晶動作の検証や、年度の最後に鉄イオンを介した2種のルテニウム錯体イオンによる分子超格子の作製も行った。特に2種のイオンによる分子超格子の光学特性について紫外可視吸収スペクトルで系間交差による独自の光学吸収も見られており、それについて最終年度はイオン液体FET構造などを利用して調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ru錯体分子膜の電子移動能の制御に成功したこと、また現在進行中でもあるが錯イオンを変えることで高品質な分子超格子膜の形成のめどが立ったこと、錯体分子膜独自の光学吸収がみられたことなどからおおむね順調に研究が進行しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である27年度は錯体分子による分子超格子構造に特化し、電子移動能よりも電界効果による錯体超格子の電子状態チューニングについてより研究を進めていく。電子移動能に関しても興味深い結果が得られており、その結果をまとめつつ、次の研究につなげていく方向性を考える。たとえば錯体高分子の導電性計測や高い導電性の達成などにつなげていくための予備実験として電界効果による電子状態チューニングを行って研究をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
学会発表について、当初9月の北海道での応用物理学会への出張を予定していたが、研究所の実験室工事に伴う実験室移動の日程と応用物理学会の開催日が重なり学会出張を取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の旅費として有効に使用したいと考えている。
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