2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ構造中2準位系の共鳴エネルギー変動の研究
Project/Area Number |
24310084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
熊野 英和 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (70292042)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 単一量子ドット / 励起子 / 荷電状態 / 光子相関 / コヒーレンス / 量子情報 |
Research Abstract |
平成24年度は、高い光子取り出し効率を実現する微小鏡筒構造を作製した上で、単一のインジウムひ素量子ドットを用いた零次元半導体ナノ構造内部の荷電状態変化の検討を行った。まず、対象が光子1つのレベルの超微弱光であり、解析に十分な信号強度(=光子数)を確保するため、微小金属鏡筒構造を導入して、プラナー構造では1%程度しかない光子取り出し効率を18%まで増大させることに成功した。従来8%程度であったが、構造の再検討を行うことによって従来プロセスで必要としていた堅い金属(低反射率金属)から高反射率を持つ銀に変更が可能になったことが本質的であった。また、金属鏡筒構造を半導体基板から剥離する際の工程も改善し、構造作製の歩留まりも大きく向上させることに成功した。これらの構造最適化により、ドット内の荷電状態の変化を精度良く高い時間分解能で検証することが可能となった。対象となる半導体量子ドット系は天然原子と異なり、キャリアの出入りを許す開放系である。このため、構造へのキャリアの出入りによって各荷電状態の分布が時間変動し、コヒーレンス消失を引き起こす。 量子ドット内の真空準位、電子準位、中性励起子、中性励起子分子、および負の荷電励起子の5状態に対する分布のフローを仮定し、各荷電状態発光間の相互相関測定を行い、これをV. Regelmanらの手法に準じたレート方程式解析を行って従来あまり考慮されていないキャリア放出を含むキャリアの出入りに特徴的な時定数を算出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、高い光子取り出し効率を実現する微小鏡筒構造の作製および光子相関測定を用いた量子ドット内ダイナミクスの検討を実施した。当初計画に対して大きな障害は発生せず、おおむね予定通りの進捗となった。
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Strategy for Future Research Activity |
半導体ナノ構造による量子光源の安定性を制限する要因である(i)ドット界面をまたぐキャリア移動、および(ii)外部環境変化によるドット内部の電子準位揺動メカニズムの検討を、高い時間分解能でダイナミクスを検出可能な光子相関測定を主たる手法として引き続き推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に生じた未使用額については、支払いが次年度となった消耗品費の支払いおよび、平成25年度に購入予定の消耗品に充てる。
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