2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子とアミロイド親和・抑制物質によるアルツハイマー病早期診断・治療法開発研究
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24310102
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
長井 篤 島根大学, 医学部, 教授 (40273940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SK Abdullah MD 島根大学, 医学部, 助教 (30403447)
塩田 由利 島根大学, 医学部, 助教 (10581415)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 近赤外線 / アミロイド / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
申請者らは、アルツハイマー病(AD)の原因とされているβアミロイド蛋白が脳内で重合する機序を解明する手掛かりとして、脳内蛋白・脂質とβ蛋白との関連を検討し、脳内で細胞膜に存在するlysophosphatidylcholine (LPC)がβ蛋白の重合、およびオリゴマー形成を促進することを確認した。この知見を基に、細胞レベルでβ蛋白の神経毒性・凝集性にLPCが関与するかについて研究を進めた。その結果、LPCは低濃度でもβ蛋白の神経毒性を増強し、神経細胞死をもたらすことが確認された。さらに細胞死の機序を分子生物学的に検討したところ、アポトーシスシグナルを介していることが明らかとなった。 ADの早期簡易診断法開発のため、医理工連携体制で髄液中微量蛋白質解析法を検討した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)による飛行時間型(TOF:Time Of Flight)質量分析計(MS)(MALDI-TOF-MS)を用いて,β蛋白を検出することができた。さらに患者髄液を用いた測定法の開発を試みた。無処理での検出は困難であったが、凍結乾燥処理を行うことで、髄液中のβ蛋白を検出できた。 AD脳内アミロイドを簡便に近赤外線で検出できれば早期診断が可能となる。近赤外線波長に吸収帯を有するナノ粒子作製を試み、フタロシアニン誘導体を作製した。この物質のうち一つの誘導体は親水性で、しかもβアミロイド蛋白親和性を有することをin vitro実験で確認した。さらに、β蛋白の凝集や解離動態に関与するかin vitroで検討した。ZnPc(COONa)8は効率的にβ蛋白(1-40アミノ酸からなるβ蛋白および1-42アミノ酸からなるβ蛋白ともに)の凝集速度を遅延させた。また、凝集したβ蛋白アミロイド線維を解離させる作用も有していることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β蛋白の凝集物質としてLPCが確認でき、その毒性についても機序から検討が進んだ。髄液測定の検討では、医理工教育プログラムで行うことで教育的意義も達成できた。髄液測定の感度増加法について開発ができた。また、新規開発フタロシアニンについては、β蛋白凝集抑制作用とその機序解明まで研究が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
LPCについては凝集促進作用が脳内でも生じている可能性が高まり、アルツハイマー病モデルマウスでの確認を行う予定である。また脳内動態の検討が必要と思われるため、これまでに検討してきたmass spectroscopyの技術を用いLPCの測定系を開発する方針とした。また、有望なβ蛋白凝集抑制剤候補としてのフタロシアニンが実際にモデルマウスで安全に有効性を示すかをモデルマウスを使用して確認する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
LPCのin vitro分析およびフタロシアニンの凝集実験を集中して優先させる必要性が生じたため、髄液中LPC測定の確立やモデル動物を用いた実験については次年度に持ち越しとなり、次年度使用額が生じた。 これまでに得られた結果を基に、mass spectroscopyによるLPC測定の確立を行い、アルツハイマーモデルマウスを飼育し、脳内LPC濃度の推移やLPCによるβ蛋白凝集や神経細胞死の有無をみる。また、新規に発見したフタロシアニン誘導物質のアミロイド凝集抑制をin vivoで検討し、安全性と動物レベルでの効果を検討する。Mass spectroscopy測定試薬、動物飼育費、in vivo実験の免疫組織学的検討用試薬、分子生物学的分析用試薬に当該使用額を用いる予定である。
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Research Products
(8 results)