2014 Fiscal Year Annual Research Report
InGaN量子構造活性層を内在する超薄膜GaNナノウォール発光デバイスの研究
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24310106
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
菊池 昭彦 上智大学, 理工学部, 准教授 (90266073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ光デバイス / 量子構造 / 化合物半導体 / ナノ結晶 / ナノ加工 / GaN / ナノウォール / ナノコラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者らが世界に先駆けて開発した新しいタイプの窒化物半導体ナノ結晶であるGaNナノウォールを用い、人工的に形状制御可能な究極のナノ結晶の実現と革新的光デバイスの開拓を目的として実施している。具体的には、ナノウォール結晶の超薄膜化(<50nm)、窒化物半導体に適用可能な低加工損傷かつ高精細ナノ加工技術の開発、InGaN量細線や量子ドットを内在する超薄膜ナノウォール結晶の形成と基礎物性評価、ナノウォールの形状自由度を駆使したナノ光デバイスの開拓等を行う。これらの研究により、制御可能なナノ構造における量子現象の発現と高効率光デバイス基盤技術の開発、ナノ物性制御技術の進展に伴う学術的・工学的側面からの社会貢献が期待される。 本年度は、本研究で開発した窒化物半導体低損傷ナノ加工技術である水素雰囲気異方性熱エッチング(HEATE)法を用いた超薄膜ナノウォール構造の作製とその光学特性評価を実施し、以下の研究成果を得た。 ①上部幅28nmの超薄膜GaNナノウォールの作製に成功した。HEATE法は、SiO2マスクの微細化によって幅10nm程度の極限微細構造にも適用できる可能性を示した。 ②InGaN/GaN量子井戸エピウェハをHEATE法でナノ加工し、InGaN量子細線(厚さ3nm、幅~30nm)やInGaN量子ディスク(厚さ3nm、直径~30nm)の作製に成功した。HEATE法の熱力学的解析を行い、水素ガスの存在によってGaNがGaとアンモニアに分解する反応が支配的であることを示した。また、HEATE加工の温度依存性を系統的に評価し、900℃程度までの低温化が可能であることを確認した。 ③HEATE法で作製したInGaN量子ディスク構造における特異な発光強度増加現象を観測した。特に興味深い点として、室温における非発光再結合の抑制効果を見出した。 ④最終年度の電流注入型デバイス作製に向けた予備実験として、pn接合LED構造のエピウェハでもナノ構造の形成が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要課題の一つである幅50nm以下の超薄膜GaNナノウォール構造をエッチング加工で作製する手法が早期に開発され、現時点で上部幅28nmのナノウォールの作製に成功している。本手法は、低損傷で10nm以下の微細化の可能性を有し、窒化物半導体における新しい極限ナノ構造の作製技術であり、As系やP系のIII-V族化合物半導体にも適用できる可能性が期待される。さらに、HEATE法による微細加工によってInGaN量子ディスク構造の室温発光強度が著しく増大する特異な現象が見出された。当初に期待したデバイス応用にも有効なナノ構造特有の光学物性の発現の実証である。分子線エピタキシー選択結晶成長によるナノウォールの形成も連携研究者である岸野教授により順調に進捗しており周期100nm以下の高品質ナノウォールアレイの成長が実現された。以上のように当初の目標の一部が既に達成されており、最終年度は特にデバイス化に向けて注力できる状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
HEATE法によるInGaN/GaNナノ構造の作製条件の検討を進め、再現性と形状制御性の更なる向上を目指す。InGaN量子井戸ナノ構造において観察された発光強度の増大現象を系統的に評価して理解を深める。AlGaN厚膜上にInGaN/GaN量子井戸ナノウォールを作製して発光特性および導波特性を評価し、電流注入型ナノウォールデバイスの実証実験を行う。ここでは、導波特性の実験結果を電磁界解析(FDTD)と比較検討し、構造の最適化を進めるとともに、ナノウォールへの均一な電流注入に向けた電極形成技術の開発を行い、ナノウォールレーザやフォトニック結晶LEDの実現を目指す。
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Causes of Carryover |
新たなナノ加工技術であるHEATE法の研究が顕著に進み、年初に購入予定としたナノインプリント装置は、実験スケジュールの前倒しに伴い立上げ時間の確保が難しいと判断して購入を控えた。発生した繰越金は翌年度における当該技術の進展のために使用する方が効率的であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
HEATE法によるナノ構造デバイス用にp-GaN/InGaN/n-GaN/Al2O3等の多様な構造のエピタキシャルウェハを購入する。また、簡便かつ高スループットなナノパターン作製法であるナノインプリント装置の導入を検討し、本計画の推進に有効と判断されれば購入経費に充当する。現時点では、他の経費についての大幅な変更予定はない。
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