2013 Fiscal Year Annual Research Report
多次元確率過程の漸近特性と待ち行列ネットワークの安全設計
Project/Area Number |
24310115
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮沢 政清 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80110948)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 待ち行列ネットワーク / 安全設計 / 稀少事象 / 多次元ブラウン運動 / 定常分布の漸近特性 / マルコフ変調確率過程 / 大偏差値理論 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
(1) 3次元以上のSRBMの定常分布の漸近特性を求める研究:3次元の場合に定常分布の裾の減少率の上限を求める方程式を導いた.3次元の場合の簡単な例でこの方程式を検討した結果,解析的に減少率を得ることが困難な場合があることが分かった.そこでskew symmetric条件を満たすSRBMの特性から手がかりを得る研究を始めた.この条件の下では定常分布が各座標に関する周辺分布の積となり(積形式という)各座標軸方向の減少率は既知である.この積形式条件を任意に選んだ2つの座標軸をもつ2次元SRBMを使って表し,減少率が得られるメカニズムを解明した(論文として投稿中).積形式の条件を緩め定常分布が2つの定常分布の積となる場合(分解可能性と呼ぶ)にその周辺分布が対応する次元の低いSRMBから得られることを示した(論文として投稿中). (2) マルコフ変調モデルとランダムウォークの研究:2次元ランダムウォークについて解析的に魅力ある定常分布が得られる条件を2種類求めた.積形式となる場合(Guy Latouche教授との共同研究)と逆時間に関するある種の不変性を使う場合(小林正弘との共同研究)である.共に論文が採択された.マルコフ変調がある場合については定常分布の減少率を求める方程式を導出し,2次元流体ネットワークと2次元一般化ジャクソンネットワークに適用した(論文を執筆中). (3) 重い裾をもつ入力がある2ノード流体ネットワークの漸近特性を求めた(Sergey Foss教授との共同研究,論文を投稿中). (4) (1)の積形式と分解可能性の結果に基づき,積形式SRBMについて大きな混雑が発生する典型的な標本路(最適路と呼ぶ)を求めるアルゴリズムを予想した.この最適路はシステムの安全設計に役立てることができる. なお,(1)と(4)はJim Dai教授との共同研究である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 3次元以上のSRBMの定常分布の漸近特性の研究は順調に進んでいる部分もあるが,解析的な難しさにも直面している.このためモデルの範囲を積形式ネットワークや分解可能なネットワークになどに限定し,定常分布の減少率がもつ意味を解明する研究を進めた.その結果積形式SRBMの定常分布の減少率や一般のSRBMの分解可能性について新しい知見を得ることができた.したがって,研究はおおむね進展していると考えられる. (2) マルコフ変調ネットワークの研究は2ノードの場合に大きく進展した. (3) 重い裾をもつ入力がある2ノード流体ネットワークの漸近特性の研究が進んだ.この研究は軽い裾を中心とする本研究課題に含まれいなかった.しかし,システム安全設計の面からは重要な研究テーマであり,本研究課題の1つとして研究を進めた. (4) システムの安全設計に関しては,大きな混雑が発生する典型的な標本路を得る研究が進み,おおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 3次元以上のSRBMの定常分布の漸近特性:3次元の場合についてモデルのクラスを制限し定常分布の裾の減少率を方程式の解として得る研究を進める.次にモデルのクラスを拡げ,更に次元を上げていく.得られた結果からモデルのパラメータが減少率に及ぼす影響を明らかにする. (2) マルコフ変調ネットワークの研究:これまでの研究により2次元の流体ネットワークと2次元のランダムウォークの場合について定常分布の裾の減少率の上限を求め,ある条件の下で減少率と一致することを確かめることができた.特に応用上重要である一般化ジャクソンネットワークの場合にこの条件が成り立つことを確認した.これらの研究成果を論文にまとめ発表する.また得られた減少率を対応する拡散近似モデルである2次元SRBMの定常分布の減少率と比較し,拡散近似の妥当性を検証する研究を進める. (3) 入力が重い裾をもつ2次元流体ネットワークの研究を進め,重い裾が安全設計に及ぼす影響を調べる. (4) これまでの研究で得られた積形式SRBMに関する最適標本路を得るためのアルゴリズムを検証すると共に,より広い範囲のモデルに適用できるようにアルゴリズムを拡張する.この結果を使って,(1)の減少率の研究に利用すると共に,ネットワークにおいて大きな混雑が発生するメカニズムを解明する研究を進める. 最終年度であるので,研究成果をまとめると共に,システムの安全設計と運用に役立つ提案を行う.
|
Research Products
(11 results)