2013 Fiscal Year Annual Research Report
ジスルフィド結合の形成を利用したDNAの構造変化の検出と分子認識機構解明への応用
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24310158
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩井 成憲 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10168544)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DNA / 構造変化 / ジスルフィド結合 / HPLC / タンパク質 / 分子認識 |
Research Abstract |
前年度に連携研究者に依頼したNMRによる構造解析が終了し、ジスルフィド結合で架橋された塩基欠落部位アナログを有する2本鎖は大きく折れ曲がった構造であることが明らかとなった。架橋されていないDNAにはそのような構造変化が報告されていないので、これにより塩基欠落部位が生じるとDNAが動的に折れ曲がることが示された。次に、研究計画調書に記載したとおり、この方法を損傷DNA上でのUV-DDBタンパク質からXPCタンパク質への置き換わりの機構解明に応用するために、(6-4)光産物と9-(2-O-メルカプトアルキル-β-D-アラビノフラノシル)アデニンを有するオリゴヌクレオチドを合成した。これまでの研究ではアデニンのアミノ基の保護にベンゾイル基を使用しており、その脱保護の条件で(6-4)光産物が分解されることが懸念されたが、この保護基は室温でのアンモニア処理により除去できることがわかったため、保護基について検討しなくても合成が可能であった。このオリゴヌクレオチドを用いて塩基欠落部位アナログと同じ実験を行ったところ、(6-4)光産物を有する2本鎖でも動的構造変化を示唆する結果が得られた。(6-4)光産物がDNA中に生じても折れ曲がりは生じないと考えていたが、塩基対形成が失われるため塩基欠落部位と同様の性質を示すものと思われ、本研究とは独立して行われている電気化学的検出法を用いた共同研究においても同様の結果が得られている。このような損傷DNAの性質を完全に理解するためにはジスルフィド結合の形成の反応速度を比較する必要があるが、実験を担当する大学院生が交代したため実験結果の再現性が十分ではなくなり、定量的な研究には至っていない。今年度の後半は溶存酸素濃度の確認を含めて種々の条件検討を行ったが、前年度に塩基欠落部位アナログを有する2本鎖について得られた反応速度を再現できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初懸念された合成上の問題点は解決したが、あらためて実験結果の再現性に問題が生じた。しかし、定性的には実験結果が再現されており、UV-DDBタンパク質の結合がなくてもジスルフィド結合により固定された折れ曲がり構造が得られているので、操作手順を再検討することにより反応速度を制御できればあと1年で研究目的を達成することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
反応速度を制御するための条件検討を行い定量性のある実験法を確立すると同時に、ジスルフィド結合により固定された折れ曲がりを有するDNAに対するXPCタンパク質の結合を調べて、ジスルフィド結合のないものと比較することにより損傷DNA上でのタンパク質の置き換わりの機構を解明する。
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