2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アラブ地域の非公的政治主体に関する総合的研究:「アラブの春」の政治変動を中心に
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24310179
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
青山 弘之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60450516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (70434701)
錦田 愛子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (70451979)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シリア / レバノン / パレスチナ / 政治主体 / 紛争 |
Research Abstract |
2年目にあたる2013年度(平成25年度)は前年度に収集した情報を踏まえ、「アラブの春」のなかで台頭・再活性化した非公的主体の実態解明を試みた。 国内で大規模な反体制運動が発生したシリアに関しては、同運動を指導・組織したと言われている「調整」や「自治評議会」、「自由シリア軍」を構成するとされる武装部隊やサラフィー・ジハード主義武装集団、アル=カーイダの系譜を組むヌスラ戦線、ダーイシュ、そして反体制運動に対抗し、既存の体制の維持・改革をめざしてきた「シャッビーハ」、「人民諸委員会」、「国防軍」(義勇兵)に着目し、その構成や役割を分析した。またこれらの政治主体が旧来から存在するそれ以外の政治主体、具体的には、バアス党、軍、ムハーバラート、さらには既存の反体制政党・政治組織などとどのような関係をおりなし、政治構造を作り出しているのかについても考察した。 「弱い国家」に分類されるレバノン、パレスチナ自治区(イスラエル)に関しては、2006年のレバノン紛争、2008年のガザ紛争で、その軍事的な力が再確認されたヒズブッラーやハマースに焦点を充てつつ、これらの組織の傘下で活発な社会福祉活動を展開するNGOの実態解明を試みた。とりわけ、ヒズブッラーに関しては、イラクのアブー・ファドル・アッバース旅団、そして前掲のヌスラ戦線、ダーイシュなどと合わせて、周辺諸国の紛争において物理的暴力を行使することで当該国の政治に影響力を及ぼすさまに着目し、動態的な把握に努めた。 なお初年度引き続き、各種メディアを通じた情報収集・整理、検証作業を行うとともに、レバノン、ヨルダン、パレスチナ・イスラエルなどへの現地調査を実施し、現地研究機関・研究者と意見交換を行った。また分析・調査の成果はウェブサイトなどを通じて公開し、その普及に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度および今年度に収集した情報、レバノンなど現地調査での識者との意見交換などを通じて、「アラブの春」以降の東アラブ地域の政治的不安定化や混乱のなかで非公的な政治主体がその役割を着実に増し、なおかつその機能も多様化している実態が把握できた点で大きな成果が得られている。しかし、とりわけシリアに代表されるように現地の治安情勢の悪化により、研究分担者が渡航・アクセス不可能、ないしは困難な地域、時期が生じ、そのことがより円滑な研究遂行の妨げとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
「アラブの春」以降の東アラブ地域の混乱は依然として余談を許さないが、着実に収束の方向に向かっているとを踏まえ、最終年度である2014年度(平成26年度)の研究においては、これまで得た情報・データの検証作業に力点を置くかたちでの現地調査、そして研究成果のとりまとめ作業を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本事業が対象としている中東地域、とりわけシリアの政治・治安情勢が2012年半ばから2013年初めにかけての劣悪な状況を脱したものの、依然として余談を許さない状況が続いていたため、現地調査、現地の研究者との研究協力に支障が生じたため。 シリア情勢に関して、依然として一部地域で武力紛争が激しく続いているが、治安回復が顕著に見られているので、外務省発出の渡航情報を踏まえ、現地の研究者との折衝の活性化や現地調査を試みるとともに、周辺諸国(レバノン、ヨルダン)およびそれ以外の研究対象国であるパレスチナ、イスラエルにおける現地調査の重点化を行う。
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Research Products
(30 results)