2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代中東におけるムスリム同胞団の総合的研究:各国での政治活動と国際ネットワーク
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24310188
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横田 貴之 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (60425048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30399216)
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (70434701)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(アルジェリア、エジプト他) / 地域研究 / 比較政治学 / 国際情報交換(アルジェリア、エジプト他) / フィールドワーク / 思想研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
当科研費研究課題の主目的である中東各国の同胞団について、今年度も情報・資料収集を行った。研究代表者の横田は、エジプトで現地調査を実施し、同胞団および関連組織のメンバーとのインタビューを行った。同国の同胞団は政治的抑圧下にあるものの、社会奉仕活動を中心に組織存続を図っている点が特徴的であった。英国・トルコでも調査を実施し、亡命同胞団メンバー同胞団の国際的ネットワークに関するインタビューを行った。研究分担者の末近は、シリア・ムスリム同胞団の現状を、主にシリア内戦を中心とした東アラブ地域の国際関係のなかで把握することを試みた。シリア領内での「イスラーム国」の台頭に加えて、中東諸国での同胞団弾圧により、シリア同胞団の活動が低迷の時期に入ったと評価した。分担者の吉川は、ヨルダン・ムスリム同胞団を中心に、訪問取材によって同国内のイスラーム運動全般の動態把握に努めた。同国は「イスラーム国」と交戦状態にあり、同胞団などのイスラーム運動は政府や世論への同調傾向を強めている。研究協力者の渡邊祥子は、アルジェリアで同胞団などイスラーム主義運動の調査を実施した。 これまでの調査・研究を踏まえ、研究代表者・分担者は当科研費課題に関して、ワルシャワでの国際学会(ISA-PDG Joint Conference)において報告を行った。この他にも、当該課題に関する論文刊行、国内外での学会発表を実施した。また、上智大学イスラーム地域研究センターとの共催で、4回の研究会を実施した。 予定されていた最終年度の総括として、エジプト・アルジェリアから有識者を招聘し、国際シンポジウムを上智大学イスラーム地域研究センターとの共催で実施した。研究代表者が編者となり、当該シンポジウム論集を刊行した。また、同胞団の思想研究の一環として、研究代表者が編訳者となり、『ムスリム同胞団の思想―ハサン・バンナー論考集』を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当科研費研究課題では、各国同胞団の政治活動に関する現地調査・資料収集をおおむね計画通りに実施できた。各国の同胞団は政治的に厳しい環境におかれているが、研究代表者・分担者・協力者は分担国以外の関係国での調査も実施し、各国同胞団の活動のみならず、亡命メンバーとのインタビューを通じて同胞団の国際的ネットワークの現状を明らかにした。その成果は、論文・論考・著書など12本、発表・講演(国外含む)10本として発表されている。当科研費研究課題の総括として位置づけられていた国際シンポについても、アルジェリア、エジプトから有識者を招聘して実施し(ヨルダン人有識者からはペーパーの寄稿)、成果物論集を刊行した。 以上の点から、当初研究計画から大きく外れることなく、研究目標をおおむね達成できたと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
当科研費研究課題は平成27年度の延長申請が受理された。理由は、テロ事件・クーデタなどエジプト国内情勢の不安に起因する。「研究実績の概要」などで上述のように、研究課題おおむねの成果は揃っているが、平成27年度は研究代表者がエジプトにおいて補足的な現地調査を1回実施する計画である。これにより、弾圧下のエジプト同胞団の政治・社会活動の実態調査を行う。現在のところ、エジプト情勢は安定しているので同国での調査を予定している。しかし、情勢悪化が生じた場合には、トルコや英国など亡命メンバーの滞在先において追加調査を実施することで、エジプト同胞団の活動実態の把握を試みる。
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Causes of Carryover |
研究代表者の調査地であるエジプト情勢の混乱に伴う安全確保上の問題が生じたため、未使用額が発生した。2013年7月のクーデタ以降、同国ではテロ事件が頻発している。また、当科研費研究の対象である同胞団が同年12月にテロ組織指定されて以降、情報提供者の多くは投獄・逃亡状態にあり、調査は困難を極めた。このため、現地調査を延期、あるいは同国外での調査に変えざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、エジプト、および同胞団メンバーの滞在国(トルコや英国)において、現地調査を実施する。エジプト情勢の安定化に伴い、テロ事件は縮小傾向にある。当局の同胞団抑圧が若干緩和されたため、同国での調査はやや容易になりつつある。メンバー滞在国での調査は2014年夏に複数の調査協力者を獲得できたので、聞き取り調査を継続する。エジプトでの現地調査が不可能となった場合でも、これら滞在国での調査で代替可能である。
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