2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24310194
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤目 ゆき 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60222410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今岡 良子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50273735)
木戸 衛一 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70204930)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モニカ・フェルトン / リリー・ベヒター / ラジャゴパラチャリ / 白朗 / チメッドツェレン / WPC / WIDF / 中華全国婦女連合会 |
Research Abstract |
2013年度の主要な研究実績は次のとおりである。 (1)2012年度の継続研究。先ず英国とポルトガルに渡航して、モニカ・フェルトンの関係者にインタビューを行い、1950年代の国際民主女性連盟(WIDF)・国際平和評議会(WPC)に関する資料を収集した。その成果を反映させて、韓国の学術誌にフェルトンに関する論文を発表した。またフェルトンのインドにおける足跡をたどり、全インド平和評議会(AIPC)・核兵器の廃絶を唱えたラジャゴパラチャリに関する資料を収集・分析し、その成果の一部を論文にまとめ、発表した。リリー・ベヒターに関しては、フリードリヒ・カール・カウルの著書 (Friedrich Kark Kaul, Ich sagte die Wahrheit ; Lilly Wächter, Ein Vorbild der Deutschen Frauen im Kamp um den Frieden,Deutscher Frauenverlage, Berlin, 1952 ) の研究を行った。木戸衛一による同書の全訳を発表した。 (2)2013年度にはキューバ・東欧・ロシア・モンゴル・中国などの女性運動に関する新たな研究に着手した。モンゴルに関しては、『モンゴル人民共和国における女性解放の歴史』をはじめ多数の女性史に関する著作がある歴史家チメッドツェレンに関する研究を行った。今岡良子がモンゴル国立大学に提出されたチメッドツェレンに関する修士論文について調査・研究し、その成果をまとめ、発表した。また、中国に関しては、朝鮮戦争時代の中華全国婦女連合会の活動調査を本格的に開始した。韓国研究者の梁東淑、中国研究者の西田千津とともに中国の瀋陽・丹東を訪ね、文献調査とフィールドワークを行い、その報告および研究の成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の基本的な推進方策は、冷戦下の戦争と軍事主義がジェンダーに与えたインパクトを検証し、WIDFを背景に平和運動に参加した世界の女性たちの意識、思想、信条、個人史に光をあて、20世紀のフェミニズム史におけるWIDFの意義を考察することである。2013年度にはこの基本的な推進方策に沿って、当初の計画を基本的にすべて実行することができた。また、内外の研究者の協力を得て、当初目標にしていた内容をこえる成果をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、これまでに一定の研究成果発表を行った女性運動家に関する研究を継承し、発展させる。モニカ・フェルトンに関しては、スバラクシュミの伝記を中心にインド時代の著述活動を分析する。リリー・ベヒターに関しては、1950年代前半に西独女性運動の象徴的存在であったベヒターがドイツの東西分離確定以後に不可視化されてゆく過程・ベヒター自身の50年代半ば以後の足跡をたどる。劉清揚・白朗・李けんに関しては、1950年代末の反右派闘争から60年代の文革時代の足跡を調査する。チメッドツェレンに関する調査も継続し、その著作の日本語訳を完成させることをめざす。 第二に、これまでに多数の資料を収集した北欧およびラテンアメリカの女性運動に関して、フォローアップ調査を行う。特に、反ファシズムのジャーナリストとして著名であったデンマークのケート・フレロン、朝鮮戦争時代にWIDF調査団に参加したキューバのカンデラリア・ロドリゲスに関しては、2014年度のうちに研究成果を発表することをめざす。 第三に、2014年度にアフリカとラテンアメリカの民族解放闘争における女性たちの役割に関する調査を本格的に開始する。またロシア・東欧に関しては、フランシスカ・デ・ハーンをはじめとする海外のWIDF研究者と連絡をとりあい、冷戦をジェンダー史の視点から考察する。中国・朝鮮・日本および東南アジア諸国についてはベトナム戦争、ベトナム・カンボジア戦争、中越戦争時代の女性運動に関する調査を行う。 第四に、これまでの研究は冷戦体制形成期に重点を置いていたが、今後はスエズ危機とハンガリー事件が発生した1956年以後、WIDFが国連における諮問身分を取り戻す80年代、ベトナム戦争終結からソ連・東欧の社会主義が崩壊する90年代についても本格的な調査を開始し、国際女性運動の観点から冷戦時代の時期区分を考察・研究する。
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Research Products
(13 results)