2014 Fiscal Year Annual Research Report
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24310194
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤目 ゆき 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60222410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今岡 良子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (50273735)
木戸 衛一 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70204930)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際民主女性連盟 / WIDF / モニカ・フェルトン / 白朗 / カンデラリア・ロドリゲス / 世界平和評議会 / 冷戦 / 女性史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度には、予定した研究計画に基づいて研究を実施し、次のような成果をあげた。 (1)西欧女性運動史の研究:英国人平和運動家モニカ・フェルトンに関しては、初期原水禁運動への貢献について論文を発表した。その後、フォローアップ調査のためにインドへの渡航調査を行い、研究交流や資料の収集を行った。西ドイツのリリー・ベヒターに関しては、フリードリッピ・カール・カウルの著作を全訳し、発表した。また、The Deutsche Digitale Bibliothek 's Service Centre の協力を得て、第二次世界大戦後の米国占領地域における女性運動の一次資料を入手した。 (2)アジア女性運動史の研究:モンゴルの女性史家E.チメッドツェレンの履歴と著作リストを作成し、発表した。中国女性史に関しては、国際民主女性連盟の活動に関与した女性たちに光をあてて調査を行った。特に注目した女性の一人が作家の白朗である。研究会で白朗が1950年代に執筆した数編のルポルタージュをとりあげ、その一部を訳出した。日本女性史に関しては、梁東淑氏の協力を得て、広島と長崎の被爆体験と原水爆禁止運動を女性史の視点で再考する研究会とフィールドワークを重ねた。さらに、敗戦後の連合国占領軍および日米安保条約に基づく駐留米軍の基地周辺の女性史に着目し、2014年11月30日・12月1日には岩国市において金静媛氏の協力を得て、日韓近現代女性史のフィールドワークと研究会を行った。 (3)ラテンアメリカ女性史の研究:国際民主女性連盟の朝鮮戦争真相F調査団に参加したキューバの法律家カンデラリア・ロドリゲスに関する調査を行った。彼女が1993年に朝鮮民主主義人民共和国を再訪した旅行記であるkorea Revisited After 40 Yearsは、ソ連・東欧社会主義圏崩壊後のキューバと朝鮮民主主義人民共和国の関係性を考察するためにも興味深い資料であり、アジア現代女性史研究会において全訳を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、当初の研究計画に沿って研究を行い、おおむね所期の目的を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はこれまでおおむね順調に進展しており、これまで取り組んできた各国の女性運動に関する諸テーマを引き続き調査・研究する。 また、これまでは第二次世界大戦終結後の冷戦体制形成期に重点を置いていたので、今後は1950年代後半から90年代初めまでの時代の研究に積極的に取り組む。1956年のハンガリー事件と1950年代末から60年代にかけての中ソ対立は、平和・民主主義・人権を志向する西側諸国の社会運動にも大きな波紋を広げた。社会主義への信頼感が失われ、世界平和評議会や国際民主女性連盟といった国際組織の影響力は弱まっていった。その一方、50年代後半から60年代は核軍拡競争が激化し、核兵器のない平和な世界を願う国際世論が高まり、日本の原水爆禁止団体や英国のCNDといった反核組織が誕生し、世界各地で反核・平和を掲げる女性運動が展開した時代でもあった。それらはやがて80年代の米軍核兵器の欧州配備をめぐる広範囲な反核運動に結びついてゆく。今後は、このような国際政治の流動の中で東側諸国・西側諸国の国際民主女性連盟加入団体がどのような混乱と葛藤を経験し、それにどのように対応しようとしたのかに注目する。 東側・社会主義圏の女性運動については、ハンガリー・東ドイツ・ソ連の女性団体について調査し、国際女性運動内部に生じた混乱や葛藤の実情を究明する。西側諸国については、国際民主女性連盟のみならず、新しい反核フェミニズムの潮流にも注目する。また、国際的な反核・平和運動に寄与した日本の女性運動に関する調査・研究を重視する。
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Research Products
(11 results)