2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320026
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
泉 武夫 東北大学, 文学研究科, 教授 (40168274)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
SCHWARTZ LAURE 上智大学, 文学部, 准教授 (20377013)
畠山 浩一 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (90344639)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 美術史 / 仏教学 / 弥勒 / 浄土 / 来世 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる平成26年度は、8月に海外調査としてフランスのギメ美術館において、科研費のテーマに関連する西域美術遺品「弥勒浄土図」「観経変相図」「救苦観音菩薩像」の調査を行い、その制作背景について貴重なデータを収集することができた。また、ガンダーラの兜率天浮彫図、北魏時代の弥勒菩薩下生仏碑像を確認し、弥勒信仰の初期的状況を研究する上での資料を得ることができた。チェルヌスキ美術館では、弥勒とみなされる北魏時代の交脚菩薩像、および南北朝時代から唐時代にかけての交脚菩薩浮彫を含む仏碑像を調査し、今後の弥勒信仰の研究材料を収集することができた。 また翌3月には陝西省延安市郊外黄陵所在の万安禅院千仏洞ならびに樊庄石窟を調査し、北宋時代における涅槃図と釈迦金棺出現図の中国北部地方における流布の状況、およびその図像を調査することができた。仏涅槃から弥勒出世にいたる中間の造形がどのように展開しうるのか、という問題について貴重な材料を実見することができた。 国内での調査作品では、東京藝術大学美術館所蔵の伝弥勒菩薩厨子扉絵、および海住山寺蔵の阿弥陀浄土図を精査することができた。この浄土図の作例は中世日本の弥勒信仰と密接な関わりがあるもので、弥勒の兜率天浄土図ともと一対だった可能性がある。今後、海住山寺旧蔵の兜率天曼荼羅図(現、興聖寺)と比較することによって、一層の研究の進展が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
欧州所在の弥勒菩薩関連の遺品の調査は、ドイツおよびイギリス所在の作品についても調査予定であったが、事情により今回はフランスのみとなった点は、やや難点である。ただ最初の計画から大きく遅れているわけではなく、おおむね順調といえる。釈迦の死後と弥勒の出現をつなぐ作例の探求として、中国北部の涅槃図・釈迦金棺出現図のセットをいくつか調査することができた点は、当初計画になかった追加資料として評価できる。 また昨年度に修理中のために調査が叶わなかった海住山寺蔵阿弥陀浄土図を精査できたことは、本研究のおおきな進展の材料となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、交脚弥勒像の宝庫である雲崗石窟、および四川の石窟を調査し、弥勒像の造形的系譜の探求を継続する。もし可能ならば、朝鮮半島中部の弥勒関連遺跡も調査地の候補とし、さらに研究の対象となる造形の巾をひろげてゆきたい。 最終年度に当たるので、これまでの調査で得られた材料をもとに報告書の刊行をめざす。
|