2013 Fiscal Year Annual Research Report
多数尊より構成される仏教尊像に関する調査研究―図像的典拠と分担製作の視点から―
Project/Area Number |
24320034
|
Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
Principal Investigator |
淺湫 毅 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存修理指導室, 室長 (10249914)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 隆 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 部長 (00192774)
岩田 茂樹 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, 学芸部, 部長補佐 (20321622)
山口 隆介 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, 学芸部, 研究員 (10623556)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 彫刻 / 多数尊 / 図像 / 工房製作 |
Research Abstract |
本研究は四天王、八部衆、十二神将等の多数尊から構成される群像を対象に、図像的典拠ならびに工房における分担製作の実態について解明しようとするものである、そのための手段として、関連文献や写真資料などのデータ集積と、実際の作品の目視調査および科学的手法を援用した調査によるデータの集積を調査の二本柱とし、それらデータに基づいた分析をおこなうことを目的としている。 研究の第2年度目にあたる平成25年度は、国内および海外にて作品の実地調査を積極的に行ない、更なる研究の進捗をはかった。 主な国内調査としては、高野山霊宝館の快慶作四天王立像、大阪市立美術館の飛天像、かんなみ仏の里美術館の十二神将立像、神奈川・称名寺(金沢文庫保管)の十大弟子立像などの調査および写真等の資料収集を行なった。 海外調査としては韓国において2回の調査を実施した。昨年9月にソウルにおいて国立中央博物館所蔵の八部衆像および十二支像の調査を行ない、本年2月には慶州において遺跡および国立慶州博物館において、四天王、八部衆、十二支像の石造浮彫を中心に調査を行なった。その結果、わが国の古代の作例と比較検討することが可能となる貴重な資料を得ることができた。 科学的手法を援用した調査として、納入品の存在する可能性があった京都・浄福寺の清凉寺式釈迦如来立像について、非破壊検査株式会社に依頼して、X線透過撮影を行なった。残念ながら納入品は確認されなかったが、表面からでは確認できない内部構造が確認され貴重な資料となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の申請時に計画していた調査は、国内、海外とも所蔵者側の事情等で調査が延期になった例はあるものの、これまでおおむね順調に実施し、写真および文献資料も適宜収集を行なっている。 第2年次にあたる本年度においては、いわゆる大仏殿様四天王の基準作となる高野山金剛峯寺所蔵の四天王立像(快慶作)の調査を行ない、その細部の形状の比較から快慶工房における仏師の分担製作の状況という、本科研の研究テーマに直結する貴重な資料を得ることができた。これは、次年度以降の調査において、他作品と比較検討する基本資料となるものである。また、金沢文庫が保管する称名寺の十大弟子立像は関東を基盤にした院派仏師の作であり、初年度に三次元計測等の詳細な調査を行なった京都国立博物館所蔵の十大弟子(関西を基盤とする院派仏師の作)とともに、関西と関東の造像状況の相違を改名する貴重な資料となった。 韓国における石造浮彫の四天王、八部衆、十二支などの調査は、韓国とわが国における古代の仏教図像の相違に関して検討する貴重な資料となった。 以上のように、本科研の主要テーマである、多数尊から構成される尊像の、典拠となった図像および、工房製作の実態の解明に関する資料を順調に集め、比較検討することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度および第2年次の調査は順調に終了した。次年度以降も引き続きこの方針で新たな資料の収集につとめ、更なる研究の充実を図る。 次年度以降も、初年度および第2年次に収集した資料に加え、さらに広い範囲で調査を行ない新たな研討材料の収集に努めることで、製作年代による違いだけではなく、造像地域の違いによる相違もあきらかとしたい。具体的には、九州における作例(福岡市美術館が所蔵する十二神将立像)や、東北における作例(本山慈恩寺の十二神将立像)などの作例をあらたに調査し、九州、関西、関東、東北という地域に違いにも眼を向けて、群像の表現および製作状況の詳細にせまる予定である。 また、科学的手法を援用した調査としては、幸いなことに本年度再オープンする京都国立博物館には、CTスキャンをはじめとする最新の計測機器が導入された。これを充分に活用し、京都国立博物館の館蔵品および寄託作品を中心にデジタルデータの収集に関してもされに一層の努力をする予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
山形・本山慈恩寺において十二神将像の調査を計画していたところ、所蔵者の都合により延期になったため。 次年度(平成26年度)に本山慈恩寺の十二神将像の調査を行なう。
|
Research Products
(6 results)