2012 Fiscal Year Annual Research Report
「生存の技法/医療・芸術・脳科学融合領域研究」~新たな人間観に基づく表現論の創成
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24320043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
建畠 晢 京都市立芸術大学, 学長 (50125217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 悟 公立大学法人京都市立芸術大学, 教授 (30515515)
十一 元三 京都大学, 医学部, 教授 (50303764)
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 芸術 / 脳科学 / アーカイブ / 医療 / 環境 / 記譜 / 知覚 / 芸術学 |
Research Abstract |
本研究は、本研究は、人間というconditionとその経験の成り立ちについて、芸術・医療・脳神経科学融合領域という独自の観点から捉え直す事で、新たな人間観(身体・感覚・健康)に基づく表現論理の創成とその成果を作業療法など臨床への還元を目的とした実験制作・検証を行う実践的なものである。初年度は(A)表現・制作グループ(B)実験・検証グループ(C)総合的分析・理論化グループ(D)理論評価・検討グループの四つのグループの共通のプラットホームとなるキーワード・基礎概念の設定と方法論について、研究会・シンポジューム・公開実験・海外調査・展覧会という多角的な試みをつうじて検証した。A)表現・制作においては、体性感覚と視覚との統合・乖離の感覚を生み出す装置として、2軸で回転するモバイル式円盤ステージを作成した。これは、実験室内だけでなく、屋外環境や茶室など固有の性質を持つ生きた環境での使用を可能にした。B)実験・検証では、上記の装置を身体運動図式とイメージの形成の関係を頭頂葉・前頭葉・前庭の関係から捉え検証すると共に、ミラーニューロン並びに、言語野との関係からの考察や多感覚や共感覚との相違点を検証しした。C)総合的分析においては、これを「行動を誘発する装置としての記譜」という概念でとらえる事で発達障害・認知症などを有する人の特徴的な知覚と美術・建築・庭園・作法などとの関係を考察する基盤を検証した。D)理論評価・検討においては、芸術家による公開実験・制作と脳科学者・哲学者・美術評論家・詩人による口頭発表を組み合わせた実験的シンポジューム「物質と記憶」を地域の小学校跡地を利用して造られた京都芸術センターで開催した。また、「ゆれる茶会」と題し、上記の2軸回転装置を茶室に設営し、哲学、脳科学、茶道の専門家を招いた公開実験や、「行動を誘発する装置としての記譜」に焦点を当てた展覧会「犬と歩行視」パート1とそれに関するトークイベントを開催した。留意事項としては、本研究の目的は、芸術と脳科学の融合といった先端技術・理論の芸術分野への応用という視点でなく、脳科学という「視の制度」・芸術という「観ることの制度」・医療という「看ることの制度」の諸関係から領域横断的な問題提起へ発展させる事であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
芸術・脳科学・医療・哲学の横断的研究に関わる基礎的概念と理論検証を研究会・シンポジュームを通じて行うと共に、公開実験・展覧会などを通じた創作に関わる実践を平行して進めることができた。さらに、初年度の成果を展開するため、表現制作・実験検証・理論構築・総合的分析の各グループが共有するための、キーワードや方法論の基盤が確立されという意味でも、研究は進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、芸術・脳科学・医療・哲学の横断的研究の中でも、「認識のプロセス」に関わる研究が中心となったが、次年度は、「複数の生産プロセス」最終年度には、「関係性の構築」に関わる研究へと発展させる事で、諸領域を総合的に{府鰍・体系化できる理論構築とそれらを具体化する芸術的実践へと展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は身体・知覚・記憶と創造的行為の問題に焦点をあてた「記譜:行動を誘発する装置」に関わる制作・実験とそれを検証することを目的として「創造的進化」と題したシンポジュームの開催に関わる準備を中心に、助成金を使用する計画である。
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Research Products
(10 results)