2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320073
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
稗田 乃 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (90181057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 言語学 / 統語論 / 情報構造 / ナイル諸語 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本申請の研究の目的は、ナイル諸語の統語論を、ナイル諸語間で比較することにより明らかにすることである。特に、統語構造のみでは説明がつかない現象について、たとえば、情報構造と語順の関係などについて研究を行う。当該年度においては、研究代表者は、ランゴ語(西ナイル語)の統語論を、研究協力者は、クプサピニ語(南ナイル語)の統語論を現地調査にもとづいて研究した。また、ドイツ国内の競争的資金を獲得したため、本申請の協力者から外れた研究者も、本申請の研究と連携して、アギエ語(南ナイル語)の統語論を現地調査した。当該年度に実施した研究の成果として、具体的には、ランゴ語の語順は、統語論的要因と情報構造からの要因の両方で決定されること、指示は、情報構造が決定することなどがわかった。統語論のみでは説明がつかない言語現象に情報構造がかかわっていることが明らかになった。 研究代表者と協力者は、本申請の研究のこれまでの成果を国際研究者ネットワークにおいて問うため、ナイル・サハラ諸語研究者の唯一の国際学会で研究発表をおこなった。代表者は、クマム語(西ナイル語)の補文構造について、協力者は、クプサビニ語の所有表現について発表した。また、研究代表者は、クマム語の統語論に関して英語による研究書、A Grammar of Kumam. The interaction between syntax and pragmatics.を出版した。この本の出版のほかに、研究代表者が責任編集者として、ナイル語研究シリーズ第8巻を出版した。このシリーズは、ナイル諸語の研究ネットワークの研究プラットホームとして、国際的に評価を受けている。研究協力者は、上記の国際学会のほかに多数の国際学会、研究集会において、当申請による研究成果を発表している。多数の研究論文を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は、クマム語の統語論に関して、英語による研究書の出版をしたことにより、ナイル諸語の統語論研究を国際的に発展させた。研究代表者と協力者は、当申請の研究成果を国際学会で発表したことで、当申請の研究の国際的な存在感を示すことはできた。しかし、当申請の目的は、ナイル諸語間の比較研究をおこなうことである。比較研究という点に関して十分な成果をあげたとは言えない。ナイル諸語研究の国際的研究プラットホームを、アジア・アフリカ言語文化研究所に展開するために、ナイル諸語研究シリーズを定期刊行しているとはいえ、国際的な研究のためのデータを提供するにとどまっており、それらのデータを比較研究する段階にいたっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当申請の研究の目的は、ナイル諸語の統語論を明らかにするために、ナイル諸語間の比較研究を行うことである。比較研究を推進するために、新年度において、ナイル諸語研究のための国際研究集会を組織し開催する。国際研究集会は、アフリカの情報構造を研究するプロジェクトをすすめているフンボルト大学と連携することにより、ナイル諸語の統語論と情報構造の関係を中心に比較、検討する。また、この成果をふまえて、研究代表者と協力者は、ナイル諸語の統語論を研究するためのデータ収集を目的とする現地調査を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者の現地調査が年度をまたがることになったため、一部旅費を次年度に使用することになった。また、予定していた現地調査期間が短くなったため。 年度をまたがって現地調査をおこなった費用に使用する。また、それでも残る残額は、国際研究集会に海外から研究者を招へいするために使用する。
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