2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320115
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外村 大 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (40277801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 宣弘 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 名誉教授 (50187390)
三谷 博 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50114666)
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60192506)
櫻井 英治 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80215681)
井坂 理穂 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (70272490)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 市民社会 / 歴史教育 / 高等教育 / 教養 / 国際比較 / 異文化理解 / 教科書 / 社会還元 |
Research Abstract |
本年度は、日本での市民社会と歴史学との関係および自分たちの大学学部教育での授業実践のあり方を踏まえつつ、他国における市民社会と歴史学との関係、主要大学での歴史教育についての事例を収集し、その特徴や参照すべき点などをまとめることに力を注いだ。 調査からは、まず対象地域である米国・台湾・韓国、東欧のいずれの地域においても基本的には、市民社会においてもまた主要大学の学部生のなかでも歴史学に対する関心は一般的には低下しつつあることや、そうしたなかで大学での歴史教育の充実、市民社会への研究成果の還元の取り組みを強化するための問題意識を持つ人びとがいることが確認された。市民社会における歴史学の位置については、現存の国家形成、社会の主流にいる人びとの政治的正当性をめぐる問題(台湾における台湾本土化のための歴史発掘や韓国における親日派問題、日本における戦後補償問題など)が引続き重要な関心事である地域もあり、その点も無視できないが、環境の変動や感染症が与えた影響など、人類全体に関わり、かつ長期変動を視野に入れた問題についての関心はいずれの地域でもある程度存在することもわかった。主要大学での歴史教育の実践においては、ハーバード大学では、学生が十分に予習・復習(指定された文献等の閲読とリポート提出)を行いうるカリキュラム、受講者数の設定が行われており、教員の講義のほかにTAを活用して討論を行う等の工夫がなされていること、台湾国立大学でも同様の試みが行われていること、ただし、歴史の方法や歴史的知識を通じて何を身につけさせるべきかに関連して学生の討論を教員・TAがどのようにリードすべきか等の問題もあるとの課題を認識していることを知ることができた。 以上の調査を通じて、日本の主要大学ではまだ十分に取り組まれていない教育実践のあり方や市民社会に対してアカデミズムの研究者が何を行うべきかを議論する材料が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本とほかの国における大学での歴史教育のあり方の比較、市民社会と歴史学との接点はどうあるべきか、それを踏まえた市民養成のための大学における歴史教育の教材作成のどれに重点を置くか等について、各研究分担者間で十分な意思一致ができていなかったことと、各研究分担者が多忙を極めて情報共有と議論の時間が十分にとれなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究分担者が前年度までの調査によって蓄積した各地域における市民社会と歴史学との関係、主要大学での歴史教育のあり方についての情報を共有し、十分な意見交換を行い、引続き調査を進めていく。その上で日本の市民社会における歴史学の役割が何であるかについて、具体的な提言の前提として論点の整理を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度においては予定していた海外調査が日程的に難しく見送りになったことや資料収集のためのアルバイト人員が雇用できず謝金の支出が少なくなった等のため予定より支出が少なかった。H25年度には見送った調査等を実施し、シンポジウム開催の費用等にも謝金、旅費を用いる予定である。
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Research Products
(29 results)