2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外村 大 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40277801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴 宜弘 東京大学, 総合文化研究科, 名誉教授 (50187390)
三谷 博 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50114666)
岩本 通弥 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60192506)
櫻井 英治 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (80215681)
井坂 理穂 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70272490)
杉山 清彦 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80379213)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歴史教育 / 教養教育 / 市民社会 / 国際比較 / 高等教育 |
Research Abstract |
平成25年度には引き続き、(1)日本の大学における教養教育としての歴史教育の実践についての検討、(2)市民社会とアカデミズムの歴史学との関係についての考察、(3)海外の主要大学における教養教育としての歴史教育の実情把握につとめた。 (1)に関しては、関連文献の収集と読み込みのほか、東京大学教養学部でのこれまでの歴史教育がどのようなものであり、そこから見えてくる問題点が何であるかの討論、日本学術会議での高校の歴史教育改革についての動向の把握等を進めた。(2)については、岩本が公共民俗学の展開に関する調査、外村が戦時空襲の被害や朝鮮人強制連行などアカデミズムに属さない市民が中心となって進める歴史研究の参与観察を行った。(3)については、柴がザグレブ大学(クロアチア)、ベオグラード大(セルビア)、井坂がデリー大学(インド)、三谷・外村・杉山が台湾大学(台湾)について、出張し現地の研究者からの直接のヒアリングや資料収集を行ったほか、現地在住日本人研究者や訪日したドイツ人研究者の協力を得て外村がハレ大学(ドイツ)とドイツの大学における歴史教育および市民社会と歴史学との関係についての情報収集、ヒアリングを実施した。これとともに、インターネット上に公表されている海外主要大学の歴史関係の授業のシラバスの入手、関連文献の収集、読み込みも行った。 これらを通じて、日本の大学における教養教育としての歴史教育の特長やメリットとともに、他地域での教育のあり方に学ぶべきことが一定程度、確認できた。 このほか、三谷、櫻井、外村、杉山が高校教員向けの講座や市民向けの歴史講座での講演、論考の執筆を行い、市民向けの歴史教育を実践するとともにその課題についての考察を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画のうち、教養教育としての歴史教育のあり方の国際比較については今年度は得られた知見も多く、進展したと評価できる。地域としてはインドおよびドイツの事例について状況把握を行うことができたこと、台湾に関して台湾大学歴史学系の専任教員・TA、全額の教養教育にかかわる研修等を行う機構の担当教員からの意見交換、ヒアリングを通じて具体的な課題や授業の進め方についても知ることができたことなどが成果である。その他の文献調査などから、日本の教養教育としての歴史教育の特長や課題が見えてきたところである。 日本国内のアカデミズムと市民社会との関係に関しては、市民の歴史研究等の実践についての調査は進めたものの、十分進展したとは言えない。アカデミズムの歴史学に対して市民社会の側は何を期待しているのか、先端的な研究をどうマスコミ等と協力して市民に伝えるかに関する掘り下げのため、関係者からのヒアリングを進める試みを検討しつつも実現できていない。 また、市民的教養のための歴史教育に資する教材作りに関しては、現段階では具体的な成果は形になっておらず、各自がそれに向けた準備と口頭発表等を行ったにとどまる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となるH26年度は引き続き、各地域の主要大学における教養教育としての歴史教育の実情把握に重点を置くこととしたい。とりわけ、(1)制度や位置づけ、統計的な情報等にとどまらない、教養教育における歴史教育のあり方についての掘り下げ、(2)現在まで現地での調査を行っていないが比較の上で重要であると考えれる海外の地域・主要大学に関する調査、(3)日本の主要大学における教養教育の中の歴史教育の実情把握、を注ぐこととする。なお、(1)については、これまでコンタクトをとっている教員の協力を得て、授業の参観等も行い、教育内容や方法、学生の反応等も含めて理解を深めることをめざす。また、(2)については韓国や中国、西ヨーロッパの状況把握を予定している。 市民社会とアカデミズムの歴史学との関係については、前年度に行うことができなかった、マスコミや高校教員、アカデミズムに属さない市民の歴史研究者から見た大学での歴史教育や研究活動、その問題点や期待についてのヒアリングを進める。これととともに、関連文献の収集、調査についても、継続する。 これらを踏まえて、H26年度の後半は、調査の取りまとめを行うとともに、関係する研究者、歴史教育関係者、市民を対象とするシンポジウムを開催する。パネラーは海外での主要大学での歴史教育に携わっている教員、日本で市民社会に歴史研究の成果を伝える仕事に従事している関係者などを予定している。そしてシンポジウムの記録とこれまでの調査活動をまとめる報告書の作成も年度内に完成させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度においては当初、中間報告的なシンポジウムを海外の研究者らを招いて行う予定であったがそれが実現できなかった。またいくつかの予定していた海外調査についても実行し得なかった。その他、アルバイトを使用した論文等の収集に関して、予想より収集すべき資料やコピー代等がかからなかったことによる。 H26年度については海外からの研究者を招いたシンポジウムの開催、関連する研究者からのヒアリングへの謝金、海外調査等を行うことで、研究費を使用する予定である。
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Research Products
(15 results)