2013 Fiscal Year Research-status Report
「アラブの春」の社会史的研究―エジプト「1月25日革命」を中心に―
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24320138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大稔 哲也 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (10261687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 美佐子 名古屋商科大学, コミュニケーション学部, 教授 (80321024)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 教授 (50272480)
岩崎 えり奈 上智大学, 外国語学部, 教授 (20436744)
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (90508912)
植村 清加 東京国際大学, 人間社会学部, 講師 (30551668)
内藤 順子 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (50567295)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アラブの春 / エジプト1月25日革命 / エジプト / アラブ |
Research Abstract |
平成25年度は参加メンバーが各自の研究のために方法論を検討し、各々の研究テーマを大筋で確定しようと努めた年であった。 まず第1に、エジプト1月25日革命に実際に参加し、革命後の政治プロセスにおいても重要な役割を果たしてきたハーレド・ファフミー教授(カイロ・アメリカン大学歴史学科長)を招聘し、東京(2014年2月4日と2月6日)と京都(2月7日)で計3回の学術講演会・研究会を開催した。そこでは、1月25日革命と革命後の事態の推移について詳細な分析が加えられるとともに、彼がプロジェクト・リーダーであった、エジプト国立文書館の革命記録プロジェクトについて議論がなされた。また、滞日中は連日、申請課題について討議を重ねた。 第2に、報告者が12月にエジプト調査を行った。カイロ郊外から紅海沿岸まで視察したほか、カイロにおいては国立文書館、国立図書館等で資料調査を継続した。また、本研究プロジェクトの協力者であるE・アブ―・ガーズィー博士(元エジプト文化大臣)やアレクサンドリア図書館のK・アザブ博士とは、革命後の実態について研究上の意見交換を重ねた。この出張の他に、7月13日には来日したZ・マルサフィー博士(ヨーク大学)とも、革命後の文化状況について情報交換した。 第3に、若手を中心とする研究会であるが、2013年6月1日に千葉悠志氏(東京大学)と竹村和朗氏(東京大学)が発表を行った。千葉氏は「アラブの春」後の中東におけるメディアとSNSの機能について検討し、竹村氏は革命後の2012年に発布された新憲法の構造分析を行った。また、2014年3月30日には、鷹木恵子氏(桜美林大学)と安田慎氏(帝京大学)が研究発表を行った。鷹木氏はチュニジアにおける革命後の民主化過程を、人類学的視点から考察した。また安田氏は、混乱を極めるシリアの事例を検討した。各回とも、熱心な議論が繰り広げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度目に当たる平成25年度は、エジプト1月25日革命に参画し、その後の政治プロセスにも深くかかわってきたハーレド・ファフミー教授(カイロ・アメリカン大学歴史学科長)を予定通りに招聘して、密度の濃い講演会・研究会を3回行うことができた。そこでは、実際に1月25日革命に参加した人物ならではの貴重な情報と、革命についての卓見に触れることができた。同時に、革命とその後の状況について、滞日中は連日討議できたのも大きな収穫であった。 また、若手研究者を中心とした国内研究会を、24年度に引き続き25年度も2回開催した。白熱した議論を通じて、参加者は「アラブの春」についての総体的な理解を深めるとともに、問題点をより明確化し、比較研究の可能性について更なる掘り下げを行っている。 さらに、25年度は報告者(大稔)がエジプト調査を行ない、エジプト文化省やアレクサンドリア図書館、カイロ大学、カイロ・アメリカン大学等の研究機関の関係者と申請課題について意見交換を行った。またすでに、24年度には齋藤剛氏、鳥山純子氏がアラブ諸国で調査を行っている。これらの上で、研究分担者・研究連携者が、各自の研究テーマの大枠を設定しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は最終年度に当たるが、エジプト1月25日革命を中心に「アラブの春」の社会史的考察を深める。そのために、本年度も継続して若手研究者を中心とする国内研究会を3-4回程度開催する。そこでは、エジプトの事例に加えて、モロッコやイランなど中東諸国の事例や、南米・ヨーロッパの事例が比較検討される予定である。また、全体的な方法の問題についても、再検討する機会を設けたい。さらに研究会のたびに、全体の報告書をどのようにまとめるかについて、議論したい。 第2に、現地中東その他へ2-3名の海外派遣を継続し、関係研究機関の研究者たちとの意見交換に努めたい。可能であれば、報告書への寄稿を依頼する。 第3に、平成26年度は報告書の取りまとめ作業を行う。 なお、研究代表者が東京大学から早稲田大学へ異動したが、本研究課題はこれまでの予定通りに遂行される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、若手研究者を中心に行われる国内研究会が、報告予定者の入院により一回分中止となった。また、報告者によるエジプト出張が他の財源によることとなった。 平成25年度に計画されていた海外派遣を、1件分は26年度へ回すこととした。また若手研究者中心の国内研究会も回数を増やすことを予定している。次年度使用額は、これらの旅費として使用する計画である。
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Research Products
(27 results)