2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24320154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
井野瀬 久美惠 甲南大学, 文学部, 教授 (70203271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 隆 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10240748)
高田 実 下関市立大学, 経済学部, 教授 (70216662)
工藤 保則 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (20314304)
藤本 憲一 武庫川女子大学, 生活環境学部, 教授 (00248121)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヴィクトリア朝 / ツーリズム / ネオ・ヴィクトリアニズム / ノスタルジー / ファンタジー / 第一次世界大戦 / 再記憶化 |
Research Abstract |
本研究課題では、21世紀初頭の今なお、イギリスのみならず、世界各地で「今なおわれらと共にある」 と言われるヴィクトリア朝(1837-1901)、ないし「ヴィクトリア朝的なるもの(Things Victorian)」へのオブセッションを「ヴィクトリア朝幻想」と呼ぶ。その形成過程を具体的に分析すると同時に、その幻想の解体、脱構築を試み、そのプロセスにおいて、われわれ自身が生きる現代という時代を見直す新たな視座を得ることが本共同研究の目的である。 研究初年度となった2012年度は、社会学と歴史学を専門とする各分担者がこの幻想をどのように捉えるか、それぞれの課題、問題意識を明らかにする作業を行った。そこでは、「ヴィクトリア朝幻想」が、(1)現代の日常生活、われわれの感覚や感性と多様かつ深く関わっていること、(2)20世紀前半の2つの世界大戦、後半に起こった植民地主義の変容、冷戦体制の崩壊、ヨーロッパ再編(EUとその拡大)などの国際情勢の変化のなかを生き延び、イギリス社会の変容を相対化しながら、その時々の必要性に合わせて構築、再構築されていったこと、(3)1990年代以降のツーリズムのなかで再生産されていること、(4)この幻想と関わって、近年日本でも数多く翻訳されている(いわゆる)「ネオ・ヴィクトリアニズム」とよばれる小説群の調査、分析は、まだ端緒に着いたばかりであること、などが確認された。 社会学者との議論のなかでキーワードと意識されたのが、なぜ21世紀初頭の今、「ヴィクトリア朝は売れるか」という問いであった。過ぎ去った時代にノスタルジーを与えつづけているもの、いや、ノスタルジーを超えてリアリティのようなものを与えているものとは何か。今後、この問いに具体的に答えることを2013年度の課題とし、「伝統と革新のせめぎあい」という言説の実相を可視化しながら、ヴィクトリア朝へのわれわれのこだわりの正体へと議論を深めていきたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会合をほぼ予定通りに開き、共同研究分担者が各自の課題を確認し、議論のためのキーワードを抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
各自の課題に即して、ヴィクトリア朝幻想形成のありようを詳細に追う。それを相互に照応させて、共通項、ならびに相違点を明確化させ、そこに、この朝幻想形成に潜んでいた問題点を具体的に洗い出していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者のひとりが、入手した資料によって分析が効率的に進んだため、計上していた出張旅費を一部使用しなかった。その分の旅費は本年度の研究に使う予定である。
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