2013 Fiscal Year Annual Research Report
映像を用いた東南アジアのゴング文化の音楽人類学的研究
Project/Area Number |
24320178
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
福岡 正太 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (70270494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 吉孝 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 教授 (00290924)
梅田 英春 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (40316203)
久万田 晋 沖縄県立芸術大学, 附属研究所, 教授 (30215024)
藤岡 幹嗣 立命館大学, 映像学部, 准教授 (80351451)
福岡 まどか 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40379318)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民族音楽学 / 映像民族誌 / 芸能 / ゴング製作 / ゴング流通 |
Research Abstract |
平成25年度は、ラオス、インドネシア等にて調査撮影を進めたほか、東洋音楽学会大会にて、中間的な成果報告をおこなった。また、ロンドン大学等で関連する映像の上映をおこない、関連分野の研究者等との意見交換をおこなった。 ①ラオスにおいては、南部山間部において調査撮影等をおこなうとともに、平成24年度の調査映像を政府関係機関および調査対象村の関係者に渡し、意見交換をおこなった。開発が進み、急速に社会が変化しつつあるが、伝統的なゴング文化は比較的変わらず伝えられており、ゴングに関する信仰やタブーについて調査を進めることができた。 ②インドネシアでは、ジャワ島、バリ島、ロンボク島などにおいて調査撮影を進めた。これまでの調査により、これらの地域における青銅製のゴングの製造および流通の概要を把握することができたが、それに加え、鉄製のゴングの製造および流通についても調査を進めた。鉄製ゴングは、青銅製のものとは異なる製造過程と流通経路をもつことが明らかになりつつある。 ③東洋音楽学会大会において、パネルディスカッション「ゴング文化研究への視角」を組織し、これまでの研究成果の中間報告をおこなった。A. これまで比較的調査が進んでいなかったベトナムとラオスの少数民族のゴング文化について報告し、B. 広い範囲でのゴングの製造拠点と流通の再編を背景として、地域のゴング文化を維持するために調律師の存在が重要であることを指摘、また、C. 鉄製ゴングが青銅製ゴングとは異なる製造と流通のパターンをもつことを示し、鉄製ゴングに注目することでゴング文化の多様性への理解を深めることにつながると論じた。 ④ロンドン大学、エストニアのワールド・フィルム・フェスティバル等で、東南アジアのゴングに関連する映像の上映をおこない、映像を通じてゴング文化を研究する可能性について、多くの研究者らと議論をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カンボジア、マレーシア等におけるゴング文化の調査撮影がまだ残されている。カンボジアについては、以前、国立民族学博物館の音楽展示の新構築にあわせて調査撮影をおこなったため、隣接するベトナムおよびラオスでの調査撮影を優先して進めた。これらの成果に基づき、カンボジアでの調査撮影をおこなうことで、この地域におけるゴング文化の相互の関連をより深く理解することができるはずである。マレーシアについては、当初、フィリピン等とのつながりの中で調査することを想定していたが、フィリピンでの調査を治安等の問題により断念したため調査を延期した。インドネシアにおける調査により、近年、ジャワ島にゴングを注文することが増えていることが伺えるため、今後、インドネシアとのつながりに注目して調査撮影をおこないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、次の2点が重点的な研究課題として浮かび上がってきた。①ベトナム、ラオス、カンボジアが国境を接する地域におけるゴング文化の特徴を明らかにすること、そして、②近年変化発展しつつあるジャワ島を中心とするゴング製作と流通のネットワークを明らかにすることである。 ①東南アジアのゴングの多くはこぶつきのゴングであるが、ベトナム、ラオス、カンボジアが接する地域の周辺およびルソン島の少数民族は、平ゴングを複数用いるアンサンブルをもっている。ルソン島は治安上の問題により現在調査が困難だが、大陸部では、本格的な調査研究がおこなわれ始めている。この地域では、民族集団ごとにゴングの編成、演奏法、レパートリーに違いが見られるため、それらを比較して共通性と相違を明らかにし、ゴング文化の特徴を探る。最終年度はカンボジアに重点をおいて調査撮影を進めたい。 ②中部ジャワで製作された青銅製ゴングの流通範囲が広まり、周辺地域におけるゴング製造拠点の再編とゴング商の台頭が見られることが、バリ島の調査等で明らかになってきた。最終年度は、スラウェシ島などにも調査の範囲を広げ、ジャワ島の青銅製ゴングの流通の広がりとそれが周辺のゴング文化に及ぼす影響について探る。一方、需要の増大等により、鉄製ゴングの流通の拡大と製造拠点のネットワーク化も進んでいる。鉄製ゴングについても、ジャワ島を中心として、さらに詳しく製造と流通の過程について調査を進めたい。 ①、②を通じて、民族集団や地域を超えたゴングの流通の背景として、外部からもたらされたゴングをそれぞれの好みに合うように調整、調律する調律師の存在が重要であることが明らかになってきた。彼らの存在に焦点をあて、多様なゴング文化の維持、発展を支えるメカニズムについても考察を深めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力者の1人が、ハワイ大で集中講義をおこなう予定があり、それに合わせてフィリピンのゴング文化に関する映像の上映会をおこない、フィリピン系アメリカ人や研究者と議論をおこなうことを計画していたが、集中講義の時期が平成26年度にずれ計画を延期したため、次年度使用額が生じた。 平成26年度中に、研究協力者のハワイ大での集中講義が実現する見通しのため、改めて、ハワイ大での上映会の計画を進める予定である。
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