2012 Fiscal Year Annual Research Report
災害の事後処理と被害予防・復興促進における法の役割―国際的視点から
Project/Area Number |
24330005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
村山 眞維 明治大学, 法学部, 教授 (30157804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
フット ダニエル 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (10323619)
佐藤 岩夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80154037)
レペタ ローレンス 明治大学, 法学部, 特任教授 (10398547)
飯 孝行 弘前大学, 人文学部, 准教授 (40367016)
吉岡 すずか 名古屋大学, 法科大学院, 特任准教授 (60588789)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原子力損害賠償 / 大規模災害 / 大量不法行為 / 和解 / 和解仲介 / ADR |
Research Abstract |
2012年度は春から秋にかけて、東京と福島県各地で原子力損害賠償について関係機関や弁護士から聴き取りを行なうほか、宮城県と岩手県において地震・津波について弁護士からの聴き取りを行なった。またプロジェクトメンバーが法テラスの実施した東日本大震災被災者のニーズ調査に参加していることから、その基本的なデータの分析を行なった。また、4月と8月に、ミシシッピ州ビロクシーにあるミシシッピ司法センターを訪問し、ハリケーン・カタリナによって家を破壊された被害者の法的救済の状況と、BPオイル漏れ事故被害者に対する法的救済の状況について、司法センターに勤務する弁護士から聴き取りを行ったほか、活動状況について観察を行なった。本研究においては、政策的提言をすることを目的のひとつとしていることから、聴き取りにおいても、実際の実務の状況について、弁護士との意見交換なども行なっている。こうした本研究の活動を研究者以外にも公開し、議論をさらに深めるために、9月30日に「原子力損害賠償の現状と課題」をテーマに、一般公開のシンポジウムを開催した。このシンポジウムにおける総ての報告と質疑応答は冊子としてまとめ、関連機関や関心のある弁護士実務家等に送っている。 これまでの調査では、被災地各地に設置された法テラスには地元住民が法律相談に訪れており、弁護士過疎地であった地震・津波および原子力発電所事故の被災地には、以前には満たされなかった弁護士ニーズがあったように思われる。反面、原子力損害賠償については、東京電力による直接支払に応じる被災者が大多数である。しかし、紛争になった場合、その処理は必ずしも円滑には進んでいない。150万件以上の東電への請求があるのに対して、紛争処理センターによる和解仲介申立は6千件に満たず、訴訟件数は未確認ではあるが、90件程度であると言われる。センターへの申立においては弁護士代理の少なさが、センターでは調査官としての弁護士の数的確保の難しさが、センターによる和解仲介の大幅な遅れをもたらしている。弁護士が少ない中で法的処理をどのように進めるかが大きな課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に計画した現地でのいわゆる「定点観測」は、春から秋にかけて実施することができた。原子力損害賠償については、東京における関連機関からの聴き取りも順調に実施した。米国における比較の観点のからの調査も2回実施することができた。実務家との交流も順調に進んでおり、9月に実施したシンポジウムは、研究のこうした進展を反映したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、現地における「定点観測」と、東京における関連機関からの聴き取りは継続して実施する。原子力損害賠償については、不動産の賠償が4月から始まり、経済的損失に対する賠償の最後の段階にさしかかっているため、除染や帰還の問題との関連も含め、賠償の進展に注目していく。また、米国ではBPオイル漏れ事故の、クラスアクション成立後の統合された訴訟がさらに進展中であり、必要に応じてニューオーリンズに行き、最終段階にさしかかっているBPオイル漏れ事故の最終的な法的対応がどのようになるのかを調査する予定である。健康問題については、放射能線量と健康診断についての情報を被災者が十分に得られるかどうかが大きな問題になっており、情報の適切な扱い方について日米比較の観点からも検討を進める予定である。また、実務家との交流を踏まえ、適宜、研究の途中経過の公開も兼ねて、一般公開のシンポジウムを次年度も開催する予定である。次年度以降も、これまでの活動方針を変更することなく、研究を継続していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は明治大学から震災研究プロジェクトの助成を受けており、研究会補助の人件費やシンポジウムの人件費謝金をその助成金から支出したため、予算に残金が生じた。この残金は、次年度におけるシンポジウム開催のための支出(人件費、協力者旅費)の一部に充てる予定である。
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Research Products
(14 results)