2012 Fiscal Year Annual Research Report
大震災・放射能被害復興の居住福祉法学と所有・責任・コミュニティの変容・再構築
Project/Area Number |
24330029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 邦彦 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00143347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 和男 神戸大学, 名誉教授 (60116241)
淡路 剛久 早稲田大学, 法学学術院, 招聘研究院 (90062653)
池田 恒男 龍谷大学, 法学部, 教授 (60092128)
松本 克美 立命館大学, 法学部・研究科, 教授 (40309084)
水野 紀子 東北大学, 法学部・研究科, 教授 (40114665)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 災害復興 / 居住福祉法学 / 所有 / 責任 / コミュニティ / 補償 / 放射能被害 / 家族 |
Research Abstract |
初年度であり、第1に、理論研究・比較法研究としては、(1)アメリカの2005年のカトリーナ被害、更に2012年の同東部のサンディの洪水被害を契機とした、多くの災害法の研究の吸収(ないし実態調査)を行い、日米比較から市場主義のアメリカでも日本以上の公的災害支援がなされていることを明らかにし、わが国の住宅補償、産業補償の限定の比較法的位置づけを行った。また理論研究の2番目として、(2)リスク研究一般・原発問題について、文献研究で知見を深めて、福島の放射能被害対策の基礎知識の拡充に努める。同時に、原子力損害賠償法上の紛争審査会による賠償の提案(中間指針等)について、調査・検討する。とくに、仙台の弁護士とともに、地域住民の退避による営業損害の問題について、検討する機会を得た。また、(放射能物質による)蓄積型損害に対する責任法上の解決策を、類似例のアスベスト、塵肺の例を参考にして、比較法的に検討する。 第2に、実態調査として、緊急性が高い、(3)東北の津波被害地の調査(とくに、岩手・宮城型の津波被害調査)に着手する。釜石市・大船渡市などの仮設住宅の現況調査とともに、今後の復興住宅の建設計画、とくに、高所移転の進捗状況、その際の障害因子の調査であり、南三陸市、登米市、陸前高田市、気仙沼市などで聞き取りをし、空間的スペースの限界・供給の遅延、退避など、コミュニティ崩壊・生活不便の問題の克服のための医療対応、居住コミュニティ新形成の方途を検討した。 他方で第3に、(4)放射能被害地域問題(福島型損害)の実態調査研究として、緊急性の高い退避問題(強制退避及び自主退避)を調査する。まず集団避難ケースの追跡調査を行い、他方で、自主避難(自主退避)の状況調査をする。「退避か、除染か」の自由意思決定を確保した、退避政策の再検討が不可欠であり、また限られた災害復興予算で、望ましい除染費用と転居者の居住福祉関連予算(その住宅、生業確保支援に当てる)の編成、転居支援NPOなどとの連携による退避をめぐる全国的ネットワークの充実の検討、他方で、退避しなかった場合の産業形成の方途検討の調査を行った(二本松市、南相馬市など)。*(3)(4)の被災地における家族問題の調査にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日米比較に関しては、サンディの調査を踏まえた一応の成果も出して、それなりに進捗した。被災地調査も、メンバー各人が福島・岩手の双方で、かなりの調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
災害問題の比較法的調査について、日米以外のヨーロッパの動向調査や、リスク論等の詰めは残され、アジア圏における災害復興研究も、今後の課題である。被災地調査は、岩手型・宮城型被害における高台移転の調査(宮城県岩沼市などでうまく行く背景分析)や福島型被害における(i)地域再生の方向性、(i)退避・転居の場合の公的支援や包有的な広域規模での復興対策の考究、とくに後者についての分析は、これからである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度で、年度内の未使用額が生じたが、これは物品の納入が遅れたことによるようで、実質的には年度内に費消している。しかしこうしたことは望ましいことではないので、次年度からはこうした事態にならないように、くれぐれも留意したい。
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Research Products
(15 results)