2012 Fiscal Year Annual Research Report
1997-98年経済危機以後の東アジア諸国ポリティカル・エコノミーの比較研究
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24330041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
恒川 惠市 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80134401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 裕 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90254375)
三宅 康之 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50363908)
松本 充豊 天理大学, 国際学部, 准教授 (00335415)
河野 元子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 研究助手 (80552017)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | タイ / マレーシア / 韓国 / 台湾 / 中国 / 日本 / 中所得国の罠 / 格差是正 |
Research Abstract |
研究参加者が現地調査と文献調査によって研究を進めた結果、経済の国際競争力強化によってグローバル経済に対応していく必要性と、格差是正・ソーシャルセーフティネット拡充を求める国内の圧力に応える必要性との間の相克は、どの国でも、当初の研究計画で想定していたよりも大きいことがわかった。これは、問題そのものが先鋭化しているからだけではなく、各国の政治社会が多様化したり、ソーシャル・メディアが発達したりしたことによって、政治参加が活発化したためである。その結果、多くの政府が明確な政策選択を避けて、総花的な(時にポピュリズム的な)対応をおこなう傾向が出ている。米国およびEUを起源とする世界不況に対して、多くの国が国内需要を喚起する政策をとったことも、この傾向を助長した。総選挙(最終的には2013年5月実施)を前にしたマレーシア、タクシン派が2011年に政権をとったタイでは、特にこの傾向がめだったが、「経済民主化」が2012年選挙で争点となった韓国、馬政権の支持率が落ちている台湾、不公平や腐敗への不満が高まっている中国でも、問題となる可能性が高い。農漁民や低所得層に対する保護・補助の拡充と比べて、経済の国際競争力強化に向けた取り組みは遅れている。中所得国の罠を避けるためには、部品製造中小企業を含む諸企業の技術・経営革新力の向上が不可欠であるが、この課題への対応はほとんどが企業自身に任されている。他方、タイにおける最低賃金の大幅引き上げや、マレーシアにおける地方への補助金配布のような政策が、大企業の負担を増やしたり、国の財政を悪化させたりすることを通して、国民経済の競争力に影響するかどうかは、本研究実施期間を通して観察・分析を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日中関係悪化によって中国担当者が現地調査を延期せざるをえず、研究代表者が健康問題で海外出張をとりやめたが、現地調査ができなかった分は文献調査によって補った。研究結果はまだ本格的な論文としては出版されていないが、韓国・台湾については雑誌『エコノミスト』『交流』のエッセーとして出版された。中国についてはまもなく大学紀要論文として出版される。タイ、マレーシア、日本については報告ペーパーとしてまとまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施できなかった中国担当者と研究代表者による現地調査を実施することによって、比較研究の質をさらに高めたい。また当初予定になかった課題として、品目別貿易データを基に、比較優位産業の変化を各国について計算することによって、どの国がどの程度産業構造転換上の困難(中所得国の罠、日本的停滞)に直面しているかを見る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の実支出額に余剰が生じた主な原因は、研究代表者および中国担当者が予定していた現地調査(延べ3回)を行えなかったからである。それと関連して、現地で雇用するはずであった助手に対する謝礼等の予算も未使用であった。平成25年度においては、この現地調査を実施すべく、旅費を多く積んである。 また上で述べた品目別貿易データ10年分を購入するための物品費も多めに計上した。
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Research Products
(10 results)