2014 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ動学的確率的一般均衡モデルの統計的推定および評価方法の研究
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24330060
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加納 隆 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (90456179)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 名目為替レート / ランダムウォーク / 動学的確率的一般均衡モデル / ベイズ推定 / ソロス・チャート / 最小解釈 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、平成25年度に開始した2国開放経済不完備市場DSGEモデルにおける名目為替レートのランダムウォークの均衡分析とそのベイズ推定の研究課題を継続し、さらに発展させた。 平成26年度に明らかにした重要な学術的知見は、割引ファクターが1に近いというランダムウォークへの必要条件を当該モデルに課すと、2国間消費比率と実質為替レート間の相関が完全に1になってしまう均衡特性である。これはいわゆるBackus and Smithパズルとして知られる2国完備市場モデルにおける実証的欠点だが、この不完備モデルにおいても同様に生成されてしまうことを意味する。この新たな知見は日本経済学会、カナダ経済学会および20th international conference of Society for Computational Economics (CEF 2014) in Osloなどの国内外の経済学会および政策研究大学院大学、University of AucklandとReserve Bank of New Zealandなどの国内外の大学・研究機関でも報告された。 さらに平成26年度は当該モデルをプラザ合意後の円ドルレートのデータへ適用し、いわゆる「ソロス・チャート」ととして知られる日米2国間の貨幣供給量比率と円ドルレートの高い相関の理論的な解釈を試みた。その成果はJournal of the Japanese and International Economiesへの投稿論文として報告され、現在改訂後再投稿中である。 また平成25年度日本経済学会春季大会で招待講演を行った『マクロ計量分析におけるDSGEモデルの役割:「最小解釈」の導入と応用』は日本統計学会和文誌の査読論文として平成26年度に公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は平成25年度の成果を継続・発展させ、多くの国内外の学会で報告し研究の将来性に高い評価を受けている。またその派生研究として円ドルレートに関する「ソロス・チャート」の理論的解釈とベイズ推定による実証的評価を行い、その成果はJournal of the Japanese and International Economiesという国際的評価が高い英文学術論文雑誌に査読改定後再投稿をしている。また「最小解釈」に基づくDSGEモデルのマクロ計量分析における役割に関する論文は、日本統計学会和文誌に査読後公刊されている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2国開放経済不完備市場DSGEモデルに基づく、名目為替レートのランダムウォークのプロジェクトを推進する。平成27年度は韓国西江大学でのワークショップ(5月)とthe second international workshop on financial markets and nonlinear dynamics in Paris (6月)での報告が決まっている。特に後者のワークショップは国際的にも評価が高く、Macroeconomic Dynamicsなど国際的に評価の高い英文学術雑誌の特集号への報告論文の投稿を求められている。 また現在当該モデルの更なる拡張と修正を行っている。まずより現実的な金融政策を考慮するため、いわゆるテイラールールとして知られている金利設定ルールを導入しモデルを修正する。また実質為替レートの内生的変動を認めるため非貿易財を導入しモデルを拡張する。その上で名目為替レートのランダムウォークがDSGEモデルの均衡としてどのような条件の下で生成されるか、またその他のマクロ変数とどのような関係を持ちうるのか理論的に解明し、それを先進各国の為替レートデータを用いてDSGE-VAR法を用いてベイズ統計的に評価する。 引き続き平成27年度中に研究成果をまとめ、トップジャーナルへの投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
海外から外国人研究者を招聘する予定だったが、他に招聘資金が付いてしまい支出できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
あらためて科研課題研究に関連する外国人研究者を招聘する予定。
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Research Products
(5 results)