2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本の労働市場の非正規化とその厚生分析への構造推定アプローチ
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24330077
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 隆一 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00397704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 亮 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70431658)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 労働経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代以降、日本の労働市場は非正規化していることが指摘されている。労働市場の非正規化は、一時点における所得格差の拡大のみならず、技能形成の機械の格差を通じて長期的な影響を及ぼす可能性がある。本研究の目的は、1990年代以降に日本の労働市場がどのように変化したのかを概観した上で、日本の労働市場において最も重要性が高いとされている大学新卒者の就職市場で、新卒者と企業がどのようにマッチされているのかを構造モデルの推定より明らかにする。その上で学卒後の初職を初期状態とする非定常ジョブサーチモデルをパネルデータを使って推定する。それにより、日本における労働者の職業選択行動の解明および経済厚生の分析を行う。また、諸外国における既存の結果との比較を通じて、日本の労働市場の特徴を明らかにすることを目的とする。
今年度は日本の労働市場の変遷についての記述的な分析がほぼ終わり、1990年代における労働参加率の低下における景気後退と少子高齢化が果たす役割についての分析をほぼまとめることができた。また、大学新卒市場におけるマッチングモデルの推定のために進めてきたデータ整備が終わったため、記述的な分析を行い、大学ランキングごとの産業選択確率が大きく異なることがわかった。さらに、パネルデータを用いた動学モデルの構造推定も試みることができた。
また、Econometric Scoety World CongressおよびEuropean Economic Association Meetingに参加し、諸外国における労働市場の研究動向および動学モデルの構造推定についての情報収集を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1990年代の労働市場の変遷については記述的な分析をほぼ終えることができた。新規大卒者市場のマッチングの分析も着手しており、本課題の最終年度となる今年度中には研究成果をまとめることができるものと思われる。さらにパネルデータを用いた分析に関しても、基本モデルについての推定はすでに試みており、最終年度に基本モデルを拡張しながら推定を進めることによって、研究成果をまとめることができるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、(1)日本の労働市場の変遷についての記述的分析、(2)大学新卒者市場におけるマッチング分析、(3)若年労働者の職業選択行動の構造推定による分析の3つをまとめることを目指す。
今年度の前半部分においてこれらの研究成果をまとめ、学術会議やセミナー等で報告できる形に整備してゆく。その過程において、研究成果の発表および諸外国の研究成果の情報収集を目的として、海外での学術会議への参加や、共同研究成果の取りまとめのための海外滞在も予定している。
さらに、後半部分では海外の研究者を招聘して国際ワークショップを開催し、本研究課題の成果発表および諸外国の研究成果についての意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
H27年度に予定していた研究打ち合わせのための海外出張を今年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
取りまとめのための共同研究者の招聘および訪問旅費 国際ワークショップ開催費用および研究者招聘旅費 国際コンファレンスおよび国内コンファレンスへの参加旅費
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