2014 Fiscal Year Annual Research Report
組織間提携の形成、維持、拡大:気候変動枠組条約への応用
Project/Area Number |
24330078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 晴雄 京都大学, 経済研究所, 研究員 (10144396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 直樹 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 准教授 (20378954)
国本 隆 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40612271)
堀 一三 立命館大学, 経済学部, 准教授 (60401668)
岡田 章 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90152298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際環境協定 / 提携 / 交渉 / 2か国メカニズム / 協力ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
条約交渉と提携形成理論:提携の下での交渉についての研究が進展し、岡田によって、提携効果を考慮した交渉分析に進展を見ており、非協力均衡分析とともに、進化ゲーム分析からも提携形成効果を確立できた。また、気候変動条約の枠組みではあるが、提携形成理論で説明されている公共財供給的な条約への一部国のみの参加について、履歴効果による別説明の可能性を示し、刊行予定の書籍に所収の予定である。 気候変動交渉:多段階交渉による非効率性の可能性を検討していたが、ナッシュ交渉解を用いた動学的交渉ゲーム分析において、結果が非効率となるためには、後の段階の決裂点に事前の交渉結果が影響を及ぼすことが必要な条件であることを示し、学会発表した。また、交渉結果の評価について、多目的分析を用いる可能性についても学会発表した。 国際交渉のオプション:オフセットメカニズムを用いる場合の課題について継続して分析を行っているが、自己選択モデルによる留保効用が私的情報である場合の分析に、不完備情報の理論分析の一環でもある国本のメカニズム分析、堀の契約理論分析を応用して分析を継続している。また、オフセットメカニズムは、排出権取引から派生的に行われることが主流であり、渡邊によるオークション実験の結果を延長した分析を継続している。これらの成果の一部は、展望論文という形式をもっぱらとしながら、堀渡邊国本編の書籍にまとめて刊行し、関連するミニ研究集会も行った。 不完全提携:提携型交渉理論において、非対称性がレントシーキングによってもたらされる可能性について分析を行い、多数派提携形成型の交渉モデルにおいて、対称均衡の下では著しい非効率性が発生し、また、対称的な環境においても、非対称均衡が存在するという予想を、奇数の場合について証明する準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、メカニズムデザイン、契約理論をもとにした、条約目的達成補助政策の研究が一段落を見た。政策応用面では提携形成を伴う交渉理論の適用可能性が主眼である。EUを中心として、フリーライダーを伴う提携形成による排出削減協定として現行体制をみなすとらえ方が主流で、それに基づく政策提案が多数なされる一方で、現実には提携の縮小と、途上国による先進国批判と米国などによる緩和策批判が進んでいた。昨年度の研究によって、上述の見解に対する一つの対案として、履歴効果を考慮した場合に、ただ乗りとは意識されない不参加によって、部分的協力の説明を与える可能性が示された。この結果をもとに、相互認識の食い違いがもたらす交渉決裂の可能性、実験などによる履歴効果の検証とフィードバックなどの追加研究による補足で結果を補強するべく、分担者の研究との融合が強化できる。 現実の交渉の経過では、本年度の後半に予定されているパリ会議を念頭とした、複線的交渉過程の産物でもある多重の提携とみなせる協力体制の構築が見られ、いまだ、最終的な体制は見通せていないながらに、従来主流であった単一提携形成モデルの提携構造タイプへの修正がより現実的となっており、これらによる研究成果の拡充が見込める。 理論面では、地球環境問題にかかわる、政治的提携と経済的提携の、重複的共存であり、その理論的な解明にあった。この課題に対して、交渉目的の提携形成については、交渉ゲームでの指名確率が一定であるという想定の下で、これまでの途中研究結果を利用できることが確認できている。それに加えて、指名確率を内生的に決定できるモデルと組み合わせることによって、この二元的な提携形成モデルの分析の道筋の可能性が示された。なおも、結論付けるにはいくつかのステップが必要であるが、本計画で到達しようと館あげていた枠組みの提示は達成されつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、これまでの理論、実験棟による実証、現実の交渉をフォローした結果などを総合し、成果の公表に努めるとともに、最終目的の一つである、これらの結果を踏まえた部分的提携理論の体系化の推進を主目的とする。このために、交渉理論をはじめとする、理論的研究成果を、ワーキングペーパーの形にまとめる。また、各地の研究者の意見を徴するために、学会等の機会に意見交流を密に行う。日程上の問題もあるが、提携理論と環境政策についての研究が盛んなヨーロッパにおいて、提携理論研究ねとワークなどに参加して、そこでの情報交換も試みる。同時にこれらのバックグラウンドとしての実験等による実証的な証拠収集も継続し、新たに加わった履歴効果などについての問題を、内外の研究者の研究結果を調べて本研究への取り入れに努める。履歴効果の問題は、理論面でも不完備情報とメカニズムの問題や、不完備契約の問題、不完備情報の下での提携形成と交渉など、これまでの研究に新たなアジェンダを追加することとなるので、これらの研究を、準備的となる可能性も高いであろうが、反映すべく推進する。 現実からのフィードバックは、この分野では特徴的に常時何らかの新規の動向が観察されるので、各国の動向やパリ会議とそれに至る経過の観察を怠りなく継続する。このためには、会議参加者などからの不断の情報収集を行う。とくに、経済メカニズムについてはパリ会議では明確な方針は出そうもない状況であるが、現状の集権的方式を保持するか、それとも、各国の多様な方式を緩やかに接続する形となるかについての結果については、本研究の比較対象ともしている点であり、その結果に応じた政策評価を行う。また、各国の国内排出権取引がスタートし、国内メカニズムも一部で開始する中で、我が国の共同クレジットシステムの位置づけも、会議の結果に応じた評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
国内の訪問予定の研究者の予定が変更されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
帝京大学経済学部への研究打ち合わせ出張。
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Research Products
(14 results)
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[Book] 組織と制度のミクロ経済学2015
Author(s)
(堀一三, 国本隆, 渡邊直樹 編) 今井晴雄, 秋田次郎, 新澤秀則, 国本隆, 石井良輔, 石黒真吾, 堀一三, 下村研一, 渡邊直樹, 花木伸行, 中嶋亮
Total Pages
338(1-24, 27-55, 57-90, 149-172, 211-241, 273-293)
Publisher
京都大学学術出版会