2013 Fiscal Year Annual Research Report
途上国の経済発展における社会ネットワークの役割-社会実験とミクロデータによる分析
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24330082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸堂 康之 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30336507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MATOUS PETR 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70508192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 社会ネットワーク / 経済発展 / 農業技術普及 / 産業集積 / エチオピア / インドネシア |
Research Abstract |
本研究は、開発途上国の経済発展において社会ネットワークがどのような役割を果たすかについて、エチオピア、インドネシア等のミクロデータによって分析を行おうとするものである。 2013年度は、まず以下のデータ収集、および社会実験を実施した。(1)エチオピアの地方都市における縫製業の零細企業(仕立屋)200社程度に対する企業レベルデータを、昨年度に引き続き収集した。(2)インドネシア・スマトラ島の農村において、前年度に調査済みの農家300世帯程度から150世帯を無作為に抽出して、農業研修を実施した。(3)研修後に、研修を実施しなかった農家を含めた300世帯に対して、家計調査を実施した。 これらのデータ、およびすでに収集済みのデータを利用して分析を行った結果、以下のような結論が得られた。(1)エチオピアの零細企業において、集積地内の企業ネットワークは売上や技術力の向上に役立っているが、集積地外の市場とのネットワークの欠如が企業の更なる成長を阻害している。(2)エチオピアの農村において、農業普及員による技術指導によって、指導された農家には技術が伝わるが、農村内のネットワークがさらにその技術がほかの農家に普及することはない。(3)エチオピア、インドネシアの双方において、携帯電話の普及はネットワークの拡大に役に立つものの、信頼関係を伴う強いネットワークの拡大や、農業技術の普及など実質的な利益の拡大には必ずしも役に立たない。実質的な利益の拡大のためには、携帯電話の普及とともに、顔の見える関係を強化するようなインフラ整備を同時に行うことが必要である。 これらの結果は、国際学会で発表され、そのいくつかはすでに国際学術誌に掲載された、もしくは掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度の研究実施計画として、(1)エチオピアの農村における農業技術の伝播・農外活動の発展、(2)エチオピアの小規模地方都市におけるアパレル産業の集積の発展、(3)インドネシアの農村におけるUターン帰村者を挙げた。このうち、(2)については完全に計画通りに終了し、論文をディスカッションペーパーとして発表し、現在国際学術誌に投稿するための準備中である。(1)については、農外活動の発展については十分な分析が行えていないが、それ以外の面では計画通りに進捗している。(3)についてはUターン帰村者を特段の対象とすることをやめ、より大きく社会ネットワークが農民および地域の発展に与える効果について分析する方向に転換し、十分な成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、インドネシアでの再度の調査を実施してデータを収集するとともに、これまでに収集したデータを利用した分析を進め、国際学会での発表と、国際学術誌への論文掲載を進めていく。研究成果をまとめて、国内外で政策シンポジウムを行うことをも検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インドネシアで行った調査の費用が、学生を利用することなどにより、予定していたよりも安く抑えることができたため。 今年度の調査やそれに関連した海外出張、および学会発表に伴う海外出張に利用する予定である。
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Research Products
(6 results)