2015 Fiscal Year Annual Research Report
人口移動を考慮した都市政策・交通政策の費用便益分析体系の構築
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24330086
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
城所 幸弘 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90283811)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バラエティー / 交通投資 / 人口移動 / 収穫逓増 / 新経済地理学 / 独占的競争 / 費用便益分析 / 集積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は人口移動を考慮しながら、都市政策・交通政策の評価が可能な費用便益分析体系を構築することである。平成27年の主たる成果は以下の2点である。第一に、これまでの成果をとりまとめて国際的学術誌であるJournal of Transport Economics and Policy誌で公表した。公刊した論文では、本研究の主要な成果である、人口移動を内生化し、集積の経済が存在する場合における費用便益分析の理論的方法を明らかにし、集積の経済を踏まえた費用便益分析モデルは、次善(セカンドベスト)の費用便益分析の応用であり、集積の経済は死重損失の一つの原因として整理することができることを示している。また、この理論的成果を応用し、現実に、集積の経済を考慮して費用便益分析を行う場合の注意点を、イギリスの費用便益分析マニュアルを例にとり、解説している。この点で、公刊した論文は、費用便益分析の研究上重要な理論的成果だけでなく、実務に直接応用可能な成果も含んでいる。第二に、これまでの成果をさらに発展させるために、交通部門が持つ兼業を、空港を例にとって、モデル化した。伝統的な費用便益分析や交通経済学では、交通部門が兼業を持つことは想定されていない。しかし、実際には、大都市の鉄道会社は沿線の不動産開発や駅構内のショッピングスペースの提供等、積極的な兼業を行っている。また、空港においては、付設駐車場や免税店からの兼業収入が着陸料収入等の本業の収入を上回ることも一般的になりつつある。このような兼業に対する分析はこれまでにも行われてきたが、恣意的な仮定をおいた不完全なモデルであった。そこで、兼業を含んだ一般均衡モデルを、空港に関して構築し、既存文献とは異なる空港政策上の示唆を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集積の経済を含んだ費用便益分析の一般均衡モデルを理論的に構築し、そこから導き出される結論を現実の経済に適用可能な形で整理し、国際学術誌で公刊できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果を発展させ、兼業を含んだ空港に関する一般均衡モデルを構築し、費用便益分析への応用を探る。さらに海運を考慮した理論分析を行う。これで、人口移動に関連する、陸海空のすべての交通手段に対応した理論分析を行うことになる。平成28年度は本研究の最終年度のため、これまでの研究成果を取りまとめて順次公表していく。
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