2013 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な医療・介護保険財政と効率的なサービス提供体制の設計
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24330098
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
岩本 康志 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40193776)
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| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 社会保障 / 医療保険 / 介護保険 / 財政政策 |
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| Research Abstract |
持続可能な医療・介護保険財政に関する研究として，長期の医療・介護費用と国民所得を予測する医療・介護保険財政モデルの改良を進めた。今年度は将来の医療・介護給付費の増加に備え，保険料の平準化を図る政策の確率シミュレーション分析をおこない，部分積立方式あるいは修正賦課方式のもとでも，将来世代の負担が低下することで，長期にわたって保険料の平準化を図ることが，世代間の負担格差の縮小に重要な役割を果たすという結果が得られた。この研究成果は2013年度の日本経済学会で報告し，現在投稿中である。
また，安定化政策としての財政政策に関する研究として，厚生評価する理論分析枠組みの構築を進めた。実物的景気循環論が想定する乗数効果と労働供給の賃金弾力性の関係のもとでは，乗数効果が大きい場合に財政出動が厚生を悪化させる可能性があることを示した。この成果を，日本経済学会，国際財政学会で報告した。
また，介護事業者の立地状況が住民の介護サービス利用と健康度に与える影響に関する研究では，自治体での通所リハビリテーション提供施設の新設を自然実験としてとらえ，対照群との比較で，施設の新設が当該自治体の総介護費用の縮減につながることを示した。施設の新設は介護需要の掘り起こしによって費用増加に結びつくとの見解もあるが，分析対象の自治体では，適切な介護サービス提供体制の整備につながり，サービス提供体制の効率性が増したことが示唆された。この研究成果は『医療経済研究』誌に公刊された。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画されていた医療・介護保険財政に関する研究では，修正賦課方式の導入について，一部を積み立てる修正賦課方式（あるいは部分積立方式）が世代間の負担格差を平準化する効果について，経済学的なメカニズムを解明する考察をおこない，その成果を学会発表，雑誌投稿することで，着実に進展した。確率シミュレーションの改良については，作業を継続しており，次年度に論文として取りまとめる計画である。
介護事業者の立地状況が住民の健康度に与える影響に関する研究は，成果を論文にとりまとめ，公刊することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
前年度までの医療・介護保険財政モデルにおける研究では，一定の積立金保有を目的とした財政運営がどのように世代間の負担格差の平準化するかに着目してきたが，ある特定の平準化効果がどのような財政運営によってもたらされるかも重要な研究課題である。これは，世代間負担の平準化の姿が政策の実行可能性の重要な判断要因となると考えるからである。今年度は，医療・介護保険財政モデルでそのような財政運営を特徴づけるために，シミュレーションプログラムの改変作業をおこない，より長い世代にわたって世代間の負担をより平準化する財政運営（積立金保有）を同定する分析をおこなう。
確率シミュレーションに関する課題では，これまで，人口変動の確率要因は大きな影響がないと考えて，確率シミュレーションの対象外としていたが，研究発表の際にその考慮を求める意見が多かったので，人口構成の確率変動を考慮に入れるように，モデルの拡張作業をおこなう。
介護事業者の立地状況が住民の健康度に与える影響に関する研究では，これまでの総介護費に与える影響から，住民の健康度に与える影響に考察の対象を移していく。昨年度の作業でより長期のデータが利用可能になったので，通所リハビリテーションの整備以降の住民の要介護度を追跡することで，健康度への影響をもつかを検証する予定である。なお，制御群（通所リハビリテーションの整備のない自治体）を設定する。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者との研究打ち合わせ，福井県での研究打ち合わせが当初の予定より少なかったため，その分の旅費の支出が少なかったことと，平成26年度に後期高齢者医療制度の匿名化データ作成委託費用の支出が大きくなることが見込まれているため，消耗品の支出を若干節約した。
次年度使用額となった分は，年度初めにおこなう研究分担者との研究打ち合わせ旅費と後期高齢者医療制度の匿名化データ作成委託費用の支出に充てる予定である。
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