2012 Fiscal Year Annual Research Report
熟練と職業世界:組織、市場、能力をめぐる総合的歴史研究
Project/Area Number |
24330107
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野塚 知二 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40194609)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市原 博 駿河台大学, 経済学部, 教授 (30168322)
禹 宗〓 埼玉大学, 経済学部, 教授 (50312913)
清水 克洋 中央大学, 商学部, 教授 (40178968)
関口 定一 中央大学, 商学部, 教授 (20138613)
松田 紀子 静岡大学, 国際交流センター, 准教授 (80432201)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 熟練 / 「熟練」の記述可能性 / 職業世界 / 能力 / 徒弟制度 / 職業教育 / 「熟練」概念の明晰性 |
Research Abstract |
本研究は、熟練の記述可能性を格段に高めることを目的とした歴史研究で、計画初年度に当たる平成24年度は、2年目以降の実証的な事例研究のための方法的準備期間と位置付けて、以下の作業を行った。 (1)労働経済学、教育社会学、職業教育・社会教育論、経営組織論など関連分野における「熟練]という語の用法を、各分野の専門家も招聘して、支援を得ながら再構成することから、それら分野においても「熟練」には明晰な定義の与えられないまま、何か他のことを説明するための概念として用いられていることが判明した。 (2)熟練と、それに関連する職業上の諸要素(勤続年数、徒弟制度、学校教育、労使関係など)との間の関係について仮説構築を試み、労務管理生成・変容の第一フェーズにおいて、徒弟制度や「全き職業世界」と結合した「自明の熟練」から、第二フェーズと第三フェーズではその自明性が崩壊して、人為的・目的意識的に要請されなければならない「操作対象としての熟練」へ転換すること、それが第四フェーズには操作対象が人間そのものへ変化するため、熟練が再び自明性の中に隠蔽されると認識するのが、従来の研究で得られた知見と最も適合するとの暫定的結論に達した。 (3)本研究期間内に考究すべき事例の選定を進め、上記(1)(2)の成果と突き合わせて、今後の研究の進め方について、合宿を含む五回の会合で検討するとともに、史料上の問題点と方法上の問題点を洗い出した。両方に共通する最大の論点が、職業世界の当事者たちにとっては、現在にいたるまで、熟練とは、能力に関連する了解可能な何らかの実体と認識されているのに、それを客観的に記述しようとすると、直ちに「熟練」概念の明晰性が喪失する理由にあることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の初年度に関する諸項目は、すべて着手され、それぞれに成果を上げていると考えられるため、おおむね順調と判断した。実証上および方法上の問題点が若干残されてはいるが、今年度以降の計画に根本的な変更を迫るものではない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度以降も、昨年度当初の研究計画通りに進めるが、当事者にとって明晰な「熟練」が学術的記述の対象となると明晰性を喪失することは、実証上・方法上の再検討を要する点で、この点を意識した作業を心がける。
|
Research Products
(19 results)